これは職人としての使命だ 被災地で大活躍、元祖「パンの缶詰」を作った男 (5/6ページ)

 「廃棄することはパン職人として本当に残念で、被災地の人たちもおいしくて保存性のあるパンがほしいという声がありました。これはパン職人としての使命だと思い、保存できるパンの開発を始めたのです」

 だが、それは簡単ではなかった。秋元は朝3時からいつものようにパン作りを始め、昼過ぎに終わると、保存できるパンの開発に取り組み始めた。最初は、ビニール袋で真空パックにするアイデアを思いついたが、パンがつぶれてしまい、袋を開けても元の姿に戻らなかった。冷凍保存も試したが、解凍するとぺしゃんこになった。

 ふわふわ感やしっとり感というパンの風味を残したまま保存食にしたいという秋元の願いは無理かと思われた。そのとき、たまたま地元で缶詰作りの見学があり、ぴんときた。

 「パンの缶詰にすればいい!」

 だが、普通の缶詰とは違う。発酵させたパン生地を缶の中に入れて焼こうとしたが、内部が結露してパンが内側にべっとりとくっついてしまう。水分を取るためベーキングシートや和紙を敷いたが、なかなかうまくいかない。

「パンの缶詰」の賞味期限は13カ月から最長37カ月まで(PRESIDENT Onlineより)

「パンの缶詰」の賞味期限は13カ月から最長37カ月まで(PRESIDENT Onlineより)

 どうしたらいいのかと秋元は頭を抱えたが、商社を通じて、ヨーロッパに耐火性と吸湿性を備えた紙が見つかり、ようやくパンの缶詰が完成した。開発に着手して1年半がたっていた。

 缶の中にこの特殊紙を敷き、発酵させた生地を入れて、そのまま焼く。焼き上がり後、冷ましてから脱酸素剤を入れてフタをする。これで内部は無酸素状態となり長持ちする。

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