日本の製造業、デジタル革命で巻き返し 工場IoT化、日立は生産期間半減 (2/3ページ)

大みか事業所の制御装置組立ライン。8台のカメラが作業者の動きを録画し、作業の遅れなどを検証する=2017年11月、茨城県日立市
大みか事業所の制御装置組立ライン。8台のカメラが作業者の動きを録画し、作業の遅れなどを検証する=2017年11月、茨城県日立市【拡大】

  • 日立製作所の大みか事業所(同社提供)

 目を引くのはICタグだけではない。各作業者の周囲には8台のカメラが設置され、さまざまな角度から常時撮影されている。作業に遅れがあれば、その部分の映像だけを再生して、遅れの原因を検証し、即改善できる。

 「制御装置の生産期間は180日から90日に半減した」

 15年から始めたIoTによる生産改革の成果に、大みか事業所の小林毅所長は胸を張る。制御装置は顧客ごとに一品一様で仕様が異なるため、生産性の改善が難しかった。だが、今や大みか事業所は日立のデジタル生産改革の総本山だ。今後は「AR(拡張現実)を活用した組み立て支援なども視野に入れる」と意欲を示す。

 日立はIoT関連サービスの拡大を成長の牽引(けんいん)役に据える。大みか事業所で開発したシステムは、工作機械大手のオークマが17年3月末に稼働した工場にも採用され、生産性を従来の2倍に引き上げた。日立は今後、他社への販売にも本腰を入れ、19年3月末までに100工場への導入を目指す。

 IoTを活用した生産改善でトヨタ自動車とも協業を開始。東原敏昭社長は「顧客の技術革新のパートナーになるのが日立の方向性だ」と強調する。

 IoTによる製造現場のデジタル改革に商機を見いだすのは日立だけではない。三菱電機は鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)で19年10月に稼働する人工衛星の組立工場にIoTを導入し、コストや生産期間を従来と比べ3割削減する生産技術の革新に挑む。

欧米勢と開発競争