【ビジネスのつぼ】大和ハウス工業「プレミアムグランウッド」

プロジェクトの総合プロデューサー、北村淳さん
プロジェクトの総合プロデューサー、北村淳さん【拡大】

  • 吉野杉は天井材やシステムキッチンの引手部分に使われている(プレミアムグランウッド世田谷・等々力の家)
  • DPL坂戸の外観イメージ

 ■日本の美の逸品提供、富裕層の心つかむ

 顧客の木造一戸建てへのこだわりに応えようと、プレハブ住宅メーカーの大和ハウス工業が、最高級の木造邸宅プロジェクト「プレミアムグランウッド」を本格展開する。コンセプトは、えりすぐりの“総合プロデューサー”が、「匠」「素材」「技術」を駆使し、日本の美の「逸品」を提供することだ。

 ◆吉野杉を生かしたい

 昨年4月、大和ハウスの東京木造プロジェクト室の北村淳室長は、イタリアの高級キッチンメーカー、バルクッチーネの作業場にいた。同社に依頼した特注システムキッチンの引手部分に、樹齢200年の吉野杉を取り付けてもらうためだ。試作品を見た北村さんは、日本の素材とイタリアのデザインの融合に自信を深めた。

 吉野杉は奈良県産の高級ブランドの木材で、節が少なく強度があり、色つやの良さから和室の天井材として知られている。だが、昭和から平成になって日本家屋から和室が消えつつあり、吉野杉が使われることが少なくなったという。

 今回のプロジェクトで総合プロデューサーを任せられた北村さんは「このスギをなんとか生かせないか」と考え、1本の吉野杉から5%程度しかとれない赤柾目(あかまさめ)材を現地に持ち込んだ。吉野杉を手にしたバルクッチーネの職人は、香りや色目にほれ込んだようだった。

 メインテーマは「今だけ、ここだけ、あなただけ」。昨年4月の第1弾プロジェクト(兵庫県芦屋市)に続き、同11月下旬には、等々力渓谷に近い世田谷区野毛の一等地に、日本の美に包まれた逸品の家とうたうモデルハウス「プレミアムグランウッド世田谷・等々力の家」が完成した。

 土地や建物などを含めた参考価格は2億7500万円。建材や設備には、吉野杉のほか御影石など、和の素材をふんだんに取り入れた。現代の名工に選ばれた職人が手掛けた土壁や、グッドデザイン賞の受賞歴のある社内デザイナーが計画した照明の配置により、光陰を活用した「侘(わ)び・寂び」の空間を表現したという。

 このほか、業界最高クラスの断熱通気外壁や、プレハブ技術を応用した柱や梁(はり)の接合金物を採用するなど、プレハブ住宅メーカーとして培ってきたノウハウも投入した。

 逸品を選ぶため、北村さんは素材の産地や職人の仕事場を訪れ、自分の目で本物かどうかを確かめた。北村さんにとって、バルクッチーネとの協業はプロジェクトの成功に不可欠だっただけに感慨ひとしおだ。

 大和ハウスから吉野杉の採用を提案されたバルクッチーネ側は当初、難色を示した。湿度の高い日本で育った含水率の高いスギでは、製品の変形や収縮を起こしてしまい品質を保証できないと考えたからだ。

 吉野杉を天然乾燥させたときの含水率は30%超。一般に乾燥材の基準は20%程度とされるが、バルクッチーネは12%を要求してきた。北村さんは、数カ月かけて特別な人工乾燥の技術力を持つ製材会社を探し出し、含水率の条件を満たすことに成功した。それだけでなく、現地での植物検疫に合格するため、適切な加熱消毒の方法を見つけ出すのにも半年かかった。

 ◆要望を実現する“人財”

 このプロジェクトには、大和ハウスの東京攻略への思いが込められている。

 東京都内における大和ハウスのシェアは10位に入れない状況で、特に世田谷区、杉並区の高級低層住宅エリアでは、競合他社に大きく競り負けているのが現状だった。

 課題は、ハイクラスの消費者が木造の高級住宅を求めている点にあった。大和ハウスは、最上位と位置づけるプレハブ住宅「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」や、木造住宅「xevoGranWood(ジーヴォグランウッド)」を展開しているが、認知度は低かった。「さらにアッパークラスのお客さまに提案できるブランドがほしかった」(北村さん)。社運をかけて始まったプロジェクトは、約4年後に日の目を見た。

 こだわりの邸宅づくりにも工夫を凝らす。総合プロデューサーの配下には、顧客の密な相談の窓口となるディレクター、設計のあらゆる問題を解決するソリューションプランナーなど、邸宅作りの相談から設計・建築、購入後のアフターサービスまで総合的に支援する「プレミアムデザインユニット」を新設した。木造商品企画設計グループの古賀博隆さんは「お客さまからの要望に『できない』とこたえるのではなく、どうやったら実現できるのかと考える“人財”をそろえた」と胸を張る。

 一般社団法人プレハブ建築協会によると、年間の住宅着工件数に占めるプレハブ住宅の割合は約6分の1で、木造住宅の需要の方が大きい。大和ハウスはライバルがひしめく木造戸建て市場を強化し、シェア拡大の原動力としたい考えだ。(鈴木正行)

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 ≪企業NOW≫

 ■マルチテナント型物流施設を開発

 大和ハウス工業は昨年12月18日、埼玉県坂戸市に同社最大の延べ床面積となる大型マルチテナント型物流施設「DPL坂戸」の工事に着手した。完成予定は2020年1月下旬だ。

 DPL坂戸は地上4階建てで、延べ床面積は17万8711平方メートル。インターネット通販、メディカルなどの事業者の入居を想定している。関越自動車道の坂戸西スマートインターチェンジから約100メートル、圏央道の鶴ヶ島ジャンクションから約5キロメートルに位置しており、首都圏向けの物流集約施設としてだけではなく、東日本全域にアクセスできる。

 テナント企業の従業員向けの託児所やコンビニエンスストアが配置され、免震システムや非常用自家発電機を備えるなど、事業継続計画(BCP)にも対応している。従業員の通勤支援として、最寄り駅との間でバスを運行する予定。合わせて従業員約1000人が雇用されることを想定し、普通乗用車約700台、二輪車約100台を収容できる駐車場を用意する。

 同社は13年4月、物流施設を積極的に開発する方針を明らかにし、ブランド名を「DPL(ディープロジェクト・ロジスティクス)」と定めた。テナント企業が複数入居が可能な物流施設「マルチテナント型」の開発を強化している。

 現在、全国で270カ所、総敷地面積約750万平方メートルの物流施設を手掛けている。同社は「今後は総合的な物流業務の効率化を図りたい」と話している。

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 ■大和ハウス工業

 【設立】1947年3月4日

 【本社】大阪市北区梅田3-3-5

 【資本金】1616億円

 【従業員数】1万5725人 (2017年4月1日現在)

 【売上高】1兆7203億円 (17年3月期)

 【事業内容】戸建住宅、賃貸住宅、分譲マンションの企画・設計・施工・販売。商業施設、物流施設の企画・設計・施工・リフォームなど