自分たちの首を絞める? EV普及で実は大変なコトがわかった電力業界の懸念 (2/3ページ)

東京電力ホールディングスと日産自動車が共同で実施する実証試験に使うバン型EV「e-NV200」(イメージ写真)
東京電力ホールディングスと日産自動車が共同で実施する実証試験に使うバン型EV「e-NV200」(イメージ写真)【拡大】

  • 記者会見する電気事業連合会の勝野哲会長=12月15日、東京都千代田区(会田聡撮影)
  • 中部電力が充電にポイントを付与するサービスを展開するトヨタ自動車の「プリウスPHV」
  • 電気自動車にプラグを接続し、施設に電力を送るデモンストレーション

 中部電力も29年6月、トヨタ自動車などとプラグインハイブリッド車(PHV)や工場の蓄電池を制御し、再エネの変動に合わせて発電量を調整する実証試験を始めた。また、中部電は、トヨタの「プリウスPHV」所有者向けに、充電量に応じてポイントを与えるサービスも実施している。

 国内の電力会社がEV関連の事業を模索するのは、欧米でEVへの移行を促す規制が相次いでいるためだ。ドイツは2030年、フランスは40年にガソリン車などの販売を禁止する方針。世界最大の自動車市場の中国も19年からEVなど「新エネルギー車」を一定割合販売するようメーカーに義務付ける。世界を相手にする日本メーカーも、EVのラインアップ強化が進んでいる。

 このため、電気事業連合会の勝野哲会長(中部電社長)は「EVの普及で、販売電力量の増加が一定程度見込める」と評価する。

 だが、電力量への影響は限定的とする試算もある。電力中央研究所の林田元就氏の試算によると、30年にEVが国内の乗用車保有台数の15~20%を占めても、電力量の増加は1%程度にとどまる見通し。

 EVは電力1キロワット時あたり7キロ走り、1台の年間平均走行距離を7000キロと想定。国内の乗用車登録台数約6125万台(軽含む)がすべてEVに代わるとして、電力量は約612億5000万キロワット時。EVが15~20%を占めると予想すれば、92億~123億キロワット時とする計算だ。経済産業省によると平成28年度の販売電力量8997億キロワット時に占める比率は1~1.4%となり、「消費量への影響はあまり大きくない印象」(林田氏)。

EVがもたらす産業構造変化への懸念