ドローンによる物流の実現に向けた制度整備の必要性が叫ばれる中、ドローンの業界団体、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は昨年12月22日、議論の土台となる「JUIDA物流ガイドライン(案)」を公表した。幅100メートル、高さ60メートルの一方通行の飛行空路設定や、機体の色をアラームレッドと呼ばれる赤にすることなどを盛り込んだ。
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■専用空路設定など具体的指針公表
JUIDAが公表した「ガイドライン(案)」は、物流業界についてeコマースの市場拡大が今後も見込まれる半面、人材不足が深刻化すると展望。状況の打開には具体的なルールのたたき台が必要だと判断し、今回、提案した。内容は民間企業・団体による自主規制の色彩が濃く、これをベースに議論のさらなる活発化を期待する。JUIDAはルールの制定により、物流業界各社の事業の合理化の推進、新規参入の促進を目指すとしている。
◆今後の議論の土台に
ドローンの物流利用については、個別な実験が行われてはいるが、具体的で体系的な指針として示されたのは今回が初めて。JUIDAはこれを今後の議論の土台にしたい考えだ。
内容は「1、ガイドライン策定の背景」「2、ガイドラインの目的」「3、ガイドラインの前提条件」「4、ガイドライン(案)」「5、ガイドラインの管理」の5章で構成されている。
具体的なルール案は「4、ガイドライン(案)」に15項目として示されていて、その中に「(2)飛行空路」「(3)機体」「(7)機体の登録」などが盛り込まれている。
ガイドライン案では、山間部や島嶼(とうしょ)部の2地点間を、目視外飛行で運用されることを想定しており、機体はマルチコプターを想定している。
それによると物流事業者がドローンを使う場合には、原則、あらかじめ設定された「飛行空路」だけを使うこととしている。提案されている空路は、水平方向(幅)100メートル、高さ60メートルで、一方通行。衝突を回避する行動については、ヘリコプターなど有人機のルールと同じにする。レースなど娯楽用途などの飛行に対して、物流の空路を避けてもらうよう周知する、などとしている。
また、機体は重量に耐えられるよう「機体強度は最大荷重の1.5倍」と明記。前方180メートル以内の航空機やドローンを検出したり、回避できたりする機能を持たなければならないことを定めているほか、機体全面を「JIS Z 9104(アラームレッド)」と呼ばれる赤い色に塗装することや、航空局からの申請番号を記したナンバープレートを機体に掲示することを求めている。
このほか、第三者機関を設置し、物流事業者が使うドローンをこの機関に登録して登録番号を取得すること、定期的に適合検査を受けることなどを盛り込んだ。
◆3月に「最終版」
ドローンの物流利用については、安倍晋三首相が2015年12月、3年以内の制度整備に言及して以来、関係者の間で整備に向けた議論が展開されてきた。「官民協議会」のもとでも「分科会」が設置され各方面の専門家が意見を表明しているが、全体のルールのたたき台になるものはそれまでなかったため、分科会の下に「作業部会」を設置し、JUIDAの千田泰弘副理事長が座長についてガイドライン案づくりを進めてきた。
JUIDAは今後、会員などから意見を聴取し修正の要否などを判断。2018年3月に開催するドローン専門の大規模展示会「JapanDrone2018」でガイドラインの最終版を示す予定だ。また、今回とは異なる条件でのガイドラインの作成も検討する。
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■考え方の基本は自主規制
□千田泰弘作業部会座長
官民協議会作業部会の千田泰弘座長(JUIDA副理事長)に話を聞いた。
--物流ガイドライン(案)を公表した理由は?
「物流利用を実現するには制度が必要で、制度を整備するうえでは、議論の土台となる案が必要です。JUIDAは以前から物流の制度整備の必要性を考えており、国の議論にもお役に立てるだろうと考え、今回これを策定し、公表することにしました」
--中心となる考え方は?
「物流でドローンを使うということは、第三者上空を、目で見える範囲を超える目視外で、重い荷物を、しかも高い頻度で飛ばすことになります。ドローンにはいろいろな使い方がありますが、物流はほかの活用法と比べて、より厳しい環境で利用することになります。もっとも大事なことは、その安全確保策に尽きます。そのことをガイドライン案でJUIDAなりにまとめてみました。発想は自主規制です。このエリア以外は例外をのぞいて飛ばさない、この機体しか飛ばさない、この方法でしか飛ばさないというものです」
--今後は?
「これはあくまでも議論のたたき台です。これでなければいけない、などというつもりはなく、むしろ多くの方に議論をしていただき、意見もいただきたいと思っています。この案が有効であるかどうかも実験などで試してみて、修正を加えてよりよいものにしていただきたいし、よいものをつくる議論の一助になればうれしいと考えています」
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