【高論卓説】マーケティング「4・0」時代 「自己実現社会」へ 企業は貢献を

 8日付の朝日新聞朝刊の1面トップを「SDGs五輪めざす東京」という記事が飾ったように、最近やっとSDGsのことが、さまざまなところで取り上げられてきた。

 SDGsとは、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals)のこと。世界の貧困の撲滅や格差の解消、環境保護など17の分野で目標を定め、169のターゲットを設定している。

 当初はなかなか認知度も上がらず日本社会の問題意識も高くない状況だったが、政府が本腰を入れて取り組む姿勢を出し始めたり、記事のように五輪での取り組みが具体化していったり、京都国際映画祭とのコラボレーションやあのピコ太郎らの協力で少しずつではあるが認知度が上がってきている。

 しかし、企業関係者にヒアリングすると何をどうやったらいいのか分からないという声が多い。特に企業活動の中でこの開発目標をどう吸収して生かしていくのかとなると頭を抱えているのが現状だ。

 片や、マーケティングの世界で見ると、今後のマーケティングは「4.0」の時代になるといわれている。そのキーワードとなるのが、米心理学者のマズローが提唱した人間の欲求5段階仮説の最上位である「自己実現」だ。モノ、消費者、人間と進化していくマーケティングが、その次の段階としてその人の自己実現に向かうためのさまざまなマーケティング活動の時代になるという論だ。

 その前提としては、SNS(会員制交流サイト)が現代社会の必須インフラとして定着し、個人同士がつながる社会となったことがある。

 SDGsとマーケティング4.0、実は根本的に目指している未来への考え方は酷似している。世界中全ての人が貧困から解放され、偏見や格差に苦しまない状況こそがこれから目指すべき社会であり、ビジネスも当然その延長線上にあるべきであるということだ。

 全ての社会的活動は世界の平和と繁栄を目標に行うべきで、そこにこそビジネスのチャンスもあるという考え方だ。むろんマーケティング手法とて同様である。

 SDGsの概念に頭を抱えるよりも、いま企業が取り組むべき顧客の自己実現への道は何か、社会が求める自己実現とは何か、豊かな社会を作っていくためにその企業が貢献できることは何か、その答えこそがSDGsに対する答えとなるのだ。難しくはない。難しいとすると、その企業は社会から必要のない会社となり、今後は退場を迫られる。

 とかくSDGsをCSR(企業の社会的責任)の延長線上で捉えて、本音では社会貢献と言ってもと考える企業には、SDGsへの解どころか21世紀型のビジネスチャンスも見えてこない。企業がもっと社会と関わらないと生き残れない時代をSDGsは警鐘している。

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【プロフィル】吉田就彦

 よしだ・なりひこ ヒットコンテンツ研究所社長。1979年ポニーキャニオン入社。音楽、映像などの制作、宣伝業務に20年間従事する。同社での最後の仕事は、国民的大ヒットとなった「だんご3兄弟」。退職後、ネットベンチャーの経営を経て、現在はデジタル事業戦略コンサルティングを行っている傍ら、ASEANにHEROビジネスを展開中。60歳。富山県出身。