iPadと監視カメラで残業撲滅、削減すれば給料増 元ブラック企業が起こした“革命” (1/4ページ)

 「3年前まで当社はブラック企業でした」

 白状しましょう。3年前まで当社はブラック企業でした。社員1人あたりの月平均残業時間は76時間。多い人は100時間近く残業していたのですから、紛れもないブラック企業です。妻から「そんなに働かせるなんてバカじゃないの」といわれたこともありましたが、当時の私は聞く耳をもっていませんでした。

※写真はイメージです(Getty Images)

※写真はイメージです(Getty Images)

 そんな私が2015年度の経営計画発表会では、残業時間月45時間未満という目標を掲げたのです。最大の理由は時代の変化。変わり目は14年4月の消費税増税です。これを原資に公共事業が盛んになりました。少子高齢化による労働人口の減少も手伝い、労働市場は売り手有利の環境に。そうなると、退職者が出てもすぐに補充できないので、残った社員の負担は増えます。そんな彼らを残業で酷使したら、さらに辞めていく人が続出するのは必至。これでは組織がもちません。

 新卒者の会社選びの基準も変わりました。ゆとり世代の特徴なのでしょうが、「仕事が楽で給料が高い会社」よりも「仕事が楽で休みの多い会社」に人気が集まるようになってきたのです。

 残業が少ない社員には「ボーナス」

 月45時間以上の残業は法令違反という判決が相次いだことも、残業を減らそうという気持ちの後押しとなりました。法令違反の根拠は労働基準法第36条、いわゆるサブロク協定です。会社はこの協定を労働組合あるいは労働者の代表と結べば、社員に残業をさせることができますが、無制限というわけにはいきません。限度時間は月45時間と定められています。判決が出ているのですから、協定を守らず社員に訴えられたら会社は勝てないでしょう。つまり、社員を違法残業させることは会社にとってリスクなのです。

最初の難関は既存社員の抵抗