iPadと監視カメラで残業撲滅、削減すれば給料増 元ブラック企業が起こした“革命” (4/4ページ)

 残業を減らしたほうがトク

 するとパソコンを使う仕事を先にやって、午後9時以降に隠れてほかの仕事をやるという猛者が現れました。そこで、次は営業所の施錠が何時だったかというデータを、契約している警備会社から取り寄せてチェックし、さらに、月に1度の部門長会議で発表するようにしたところ、さすがに部門長の意識が変わり、各営業所が競うようにして、早く帰るようになりました。

 そして、最も効果的だったのが、部門を横断して改善を進める社内チームのひとつとして発足させた「早帰り推進チーム」の働きです。私は彼らに「売り上げは下がってもいいから残業時間を減らせ」というミッションを与えました。だが、彼らはそれを「数字を維持したまま残業時間を減らすのが自分たちの役割」だと解釈して、ここに紹介した以外にもさまざまな施策を考えてくれたのです。彼らの働きなくしては、これだけ早く早帰り文化が根付くことはなかったでしょう。

 私が最初に「売り上げは下がってもいい」といったのは、たとえそうであっても早く残業がない会社にしておいたほうが、長期的に見れば会社にとってメリットがあると考えたからです。そして、実際、残業撲滅に取り組み始めてから2年強で、人件費は1億5000万円減り、経常利益は2倍になりました。

 よく、自分の会社も残業を減らしたいのだがうまくいかないという社長がいますが、社長が先頭に立って「やれ」と強権を発動しないかぎりうまくはいきません。なぜなら、残業を減らすというのは会社に革命を起こすことだからです。改善では76時間を45時間にはできませんよ。

 (武蔵野社長 小山 昇 構成=山口雅之 撮影=的野弘路)(PRESIDENT Online)