【ハザードマップ】大黒商事/スキージヤーナル バブル期の「負の遺産」を整理

 ▼大黒商事 大黒商事と、関連会社の大黒地所、豊川カントリー倶楽部の3社は1月9日に名古屋地裁から破産開始の決定を受けた。

 大黒商事は事業者向け金融業者として設立し、以降は保険業務も手掛けるようになり、大手保険会社の代理特約店に指定。その後も自動車リース業や不動産賃貸業などを併営し、ピークの1990年12月期には売上高約34億円を計上していた。

 しかし、同業他社との競合激化の影響に伴い業績が落ち込むなか、豊川カントリー倶楽部のゴルフ場用地購入に伴う借入が負担となり、これがグループ全体の資金繰りを大きく悪化させ、ゴルフ場建設計画自体も頓挫した。

 近年は業績回復のための営業拡販や経費削減などの経営努力を進めていたが、多額の借入負担により返済の見通しが立たなくなったことから、グループ企業3社ともに昨年4月25日に事業を停止していた。

 ▼スキージヤーナル スキージヤーナルは1月9日付で元従業員らから東京地裁に破産を申し立てられた。1966年創刊の月刊「スキージャーナル」を出版していた前身企業の出版事業を譲り受けて設立。同社が発行する「スキージャーナル」はウインタースポーツの月刊誌として、スキー技術や指導法、競技スキーや国内外のスキーリゾート情報などを掲載し、愛好家らを中心に広く知られていた。また、月刊「剣道日本」などの定期刊行物のほか、各種スポーツの実用書や関連映像の制作なども行っていた。

 92年5月期の売上高は約16億5000万円に上ったが、近年は出版不況による発行部数の減少に歯止めが掛からず、2015年5月期の売上高は約5億5500万円に低下。その後、資金繰り悪化から債務の支払い遅延なども発生し、17年12月に資金ショートを起こした。12月29日には月刊「スキージャーナル」と「剣道日本」の出版を18年1月号をもって休刊すると発表。実質的に事業を停止していたが、会社側による債務整理がなされず、賃金の未払い状態が続いていた元従業員らが破産を申し立てた。

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【会社概要】大黒商事

 ▽本社=愛知県豊川市

 ▽設立=1954年1月

 ▽資本金=7000万円

 ▽負債額=約177億円(関連会社分含む)

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【会社概要】スキージヤーナル

 ▽本社=東京都北区

 ▽設立=1984年4月

 ▽資本金=1000万円

 ▽負債額=約8億3900万円

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 〈チェックポイント〉

 大黒商事はバブル期にゴルフ場開発に乗り出したが頓挫。多額の負債だけが残った。近年は保険代理業などを続けてきたが、塩漬け状態だった負の遺産を整理するかたちとなった。バブル崩壊から25年あまりが経過。しかしいまなお隠れた負債を抱え、当時の傷に苦しむ企業は多い。

 スキージヤーナルは給与の未払いを理由に、従業員から破産を申し立てられた。会社側の債務整理が遅々として進まなかったためという。倒産時、労働債権は優先的に支払われるべきものだが、法的整理がなされないとうやむやになるケースもある。透明性を確保するためにも、破産手続きが必要との判断だった。(東京商工リサーチ常務情報本部長 友田信男)