【兵庫発 輝く】ワールド・ワン 自治体と協定、居酒屋で新鮮食材を安定供給

大勢の客でにぎわう「青森ねぶた小屋」=神戸市中央区
大勢の客でにぎわう「青森ねぶた小屋」=神戸市中央区【拡大】

  • 河野圭一社長
  • 土佐清水ワールドの全店で提供している「かつおの藁焼き塩たたき」(ワールド・ワン提供)

 全国各地の産直食材を使った郷土料理がウリの居酒屋を展開するワールド・ワン(神戸市中央区)。青森県や高知県土佐清水市などの自治体と連携協定を結び、鮮度の高い食材をスピーディーかつ安定的に調達している。地方の特色ある郷土料理が味わえると人気で、店舗は地域の特産品も販売するなどアンテナショップとしての役割も担う。昨年は8店舗を新たに開店し、東京進出も果たした。

 ◆水揚げ翌日に提供

 神戸の玄関口・三宮にある居酒屋「青森ねぶた小屋」。平日は仕事帰りの会社員でにぎわい、店内には「やってまれ」と威勢の良いかけ声が響く。祭りばやしなどに使われる青森の方言で、この店では店員が地酒を客のグラスにつぐ際の合図となっている。

 昨年11月にオープンした同店は、同年4月に立ち上げたばかりの新ブランド「青森ねぶたワールド」の姉妹店。水揚げ翌日に届くホタテやマグロといった魚介類の新鮮な刺し身、B級グルメとして人気の「十和田バラ焼き」などの料理が、青森の地酒と一緒に楽しめる。

 スピード配送を実現したのが同社と青森県との連携協定だ。ヤマト運輸が運営する青森県の総合流通プラットフォーム「A!Premium」を活用し、水揚げや収穫から2日程度かかっていた関西までの輸送時間を大幅に短縮。これまで東京・築地市場止まりだった青森の水産品が関西でも手に入るようになった。

 ワールド・ワンが連携協定を初めて結んだのが四国最南端に位置する高知県土佐清水市。ブリやサバなど水産業が盛んだが、空港や鉄道がなく「東京から最も遠いまち」ともいわれている。

 きっかけは2012年ごろに河野圭一社長が地元の商工会議所を通じて生産者らを紹介されたことだった。若い生産者を中心に、もっと地元食材をアピールしたいと売り込まれ、既存店でフェアを開催した。

 顧客の反応も良く、フェアを重ねたことで認知度も高まったと判断。出店に向けて同市と協定を結んだ。安定的な供給の確約を受けるとともに、市が所有するトラックに水槽を積み神戸へ直送することで、水揚げから6時間以内の輸送を可能にした。15年6月、新鮮な刺し身やメジカを原料とした「宗田節」を使った料理が味わえる「土佐清水ワールド」の1号店を神戸市にオープン。その後も次々と出店し、昨年7月には東京にも進出した。

 同社は地域活性化を掲げて、産直食材を使った郷土料理にこだわり続けている。河野社長は「各地の魅力的な食材は出荷先が限られており、生産量は伸び悩んでいる」と指摘。同社の店舗網を生かせば、ブームに頼ることなく安定的に生産できるようになり、地元の活性化につながるとしている。

 ◆物品販売にも注力

 また、河野社長は各地の郷土料理をテーマにした居酒屋を「食べ物を通じた地域のショールーム」と表現。店には土佐清水や青森などの自治体名が書かれた看板を掲げ、郷土料理が食べられるだけでなく、地域の特産品の販売にも力を入れる。地域の魅力を発信するアンテナショップとしての機能を目指しているからだ。

 また、河野社長は「地域活性化に向け、店舗にとどまらない事業も強化したい」としており、会員を対象にした現地への観光ツアーに取り組んでいるほか、特産品を集めた通販サイトの立ち上げを検討している。(岡本祐大)

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【会社概要】ワールド・ワン

 ▽本社=神戸市中央区下山手通2-13-3 ((電)078・333・8883)

 ▽設立=1996年

 ▽資本金=8050万円

 ▽従業員=100人

 ▽売上高=21億円(2017年11月期)

 ▽事業内容=飲食店経営

                 ■ □ ■

 □河野圭一社長

 ■情熱ある生産者通じ地方活性に貢献

 --20代から飲食店を経営。飲食業界に入ったきっかけは

 「神戸のカラオケバーで働いたのがスタート。店舗経営を任されるようになったが、1995年の阪神大震災で全壊した。その後は大阪でダイニングバーなどを経営し、休みなくがむしゃらに働いた。数店舗を展開するようになったが、感覚だけで経営していたため客足も伸びなくなった。このままでいいのかと自問し、事業を整理した」

 --一時プロレスラーになった

 「空手の経験があり、格闘技好きだったことから、知人の紹介でプロレス団体『闘龍門JAPAN』などのリングに上がった。しかし、けがが続き、心身ともに疲れた。志半ばで辞めた飲食業界を、きちんと勉強して再挑戦したいという気持ちもあった。きっかけは沖縄旅行中に出合ったタイモの天ぷら。素朴な味わいで、とてもおいしかった。まだ沖縄料理がめずらしかったころで、なんとかして魅力を伝えたいと神戸に沖縄料理店を開いた」

 --郷土料理にこだわるのは

 「タイモのように情熱のある生産者が手がけるおいしいものは日本各地にあるが、生産者だけでは販売まで手が回らない。安定して発注することで生産態勢も安定し、地方の活性化に貢献できる」

 --生産者を熱心に訪問している

 「本当に熱意があるかなど、どのような生産者なのかを知るため必ず会いに行くようにしている。現地にもっとおいしいものがないか探すのも楽しみの一つ。生産者に対し安く仕入れる交渉はしない。単なる仕入れ先でなく、商品化に向けて料理のアドバイスをもらうなど、重要なビジネスパートナーだ」

 --海外展開の構想は

 「土佐清水や青森が一つの地域となっているように、日本全体を一つの生産地として出店できないか検討中だ。郷土料理を通じて日本文化を知ってもらえればうれしい」

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【プロフィル】河野圭一

 かわの・けいいち 高校卒業後、自動車整備工などを経て神戸市内でショットバーを開業。1998年から約2年間はプロレスラーとしても活躍した。47歳。兵庫県出身。

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 ≪イチ押し!≫

 ■土佐清水発祥かつおの藁焼き塩たたき

 高知県土佐清水市で水揚げされたカツオを、ガスバーナーではなくわらを使って、客席からよく見えるような場所で豪快に焼き上げる。土佐清水ワールドの全店で販売している定番メニューだ。

 わらであぶったことで香ばしさが加わる。ほどよく振られた塩が利いており、そのまま食べてもおいしいが、地元にあるスーパー「スーパーストアみやむら」(高知県土佐清水市)が製造したオリジナルのポン酢を合わせるのもおすすめという。

 カツオのたたきは、同市が発祥という説があり、皮がついたままの魚をあぶり焼きにする食べ方がルーツになっている。2人前は十分にあるという「大」で1450円(税別)。