【フロントランナー 地域金融】千葉信用金庫稲毛支店の宇井敏之支店長(2)


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 ■卸売市場の「旬」のニーズに対応

 「市場の資金は、決済のサイクルが非常に短いという特徴があります。当座貸し越しをご利用いただいている先も多くありますが、仕入れのために朝引き出した資金が、その日のうちに戻っているケースも少なくありません。預貸金残高をしっかりと管理したうえで、各社の資金ニーズに的確に応えていくことが大切です」

 千葉信用金庫稲毛支店の宇井敏之支店長はこう話す。

 卸売市場の資金ニーズは、季節性の仕入資金が基本。農水産物の「旬」や、年末などの書き入れ時にまとまった資金が必要になるケースだ。ただ、「旬」は事業者の取扱品目で異なる。葉物に強い仲卸、果物が得意な仲卸など事業者ごとの特性も踏まえ、各社のニーズに応えていく必要がある。

 この点は、市場担当の融資渉外が毎日場内を回り、各社の業況や今後の動きを逐一確認。天候による豊・不作などの影響があれば、信用保証協会も活用しながら適宜、資金手当ての提案も行っていく。

 「足を使ってお客さまとの距離を縮め、地域に密着した活動を行うことが私ども信用金庫の最大の強みです。ともに地域社会のインフラを担う地域金融機関と市場との関係は特に、ビジネスライクでは成り立たない部分もある」(宇井支店長)。

 生鮮食品の安定需給を実現するため、生産者と卸・仲卸には特別な信頼関係がある。不作時にも生産者から商品を提供してもらえる卸・仲卸業者は、豊作時にも買いたたかず利幅を削ってでも仕入れるケースが珍しくない。

 生産者だけでなく卸業者は他の市場との間で商品を融通、仲卸業者が生産者との直接ルートを持つなど、常に安定的に良い品をそろえるため、各社は工夫を凝らしている。

 こうした事業者の資金サポートには臨機応変な対応が求められる場面が少なくない。割高な仕入れや決済期日の変更があっても、取引先の実情をしっかりと聞き柔軟性を持って融資対応することで、強固な信頼関係につながっていくわけだ。

 こうして築いた信頼関係は、着実に成果へも結びつく。

 いま流通業界で注目されているコールドチェーン。生産・輸送・消費の過程で、途切れることなく商品を低温に保つ物流方式だ。千葉市地方卸売市場でも、卸業者にコールドチェーン対応の施設導入計画があった。千葉信用金庫も資金面の相談を受けたが、大規模な設備投資であり、当初は協調融資での対応が検討された。しかし、当該卸業者の社長が「いつも親身に対応してくれる千葉信用金庫にすべてお任せしたい」との意向を示したことで、大口の融資実現に至ったそうだ。

 「市場担当の個人渉外には、積極的に職域セールスにも取り組んでもらっています。取引先の卸・仲卸業者の従業員ともしっかりと信頼関係を構築することで、さらなる取引深耕を図っています。市場を円滑に回すことには大きな社会的意義がありますので、今後は不測時の資金でも可能な限りプロパー融資で対応していきたいです」

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 (編集協力)近代セールス kindai-sales.co.jp