なぜラーメン二郎は“パクリ店”を許すのか 追従者を蹴落とさない精神 (3/5ページ)

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 内なる顧客の声を信じる

 崇拝型ブランドが決して顧客の気持ちを考慮しない、ということではない。信用するのは市場調査のデータではなく、「内なる消費者」の声である。これが独特の嗅覚となり、強烈な個性と完成度を持った商品を生み出していく。一方、消費者サンプリング調査に基づいてニーズを測定すると、往々にして当たり障りのない無難な選択に陥りやすい。

 「ブリュードッグ」(スコットランド)は2007年、ワットとディッキーという2人のビールオタクによって設立されたマイクロブリュワリーである。立ち上げた理由は「心から飲みたいと思えるものが世の中になかった」から。ウイスキー樽熟成のスタウト「パラドックス」を皮切りに幾多のビアコンペで賞を獲得して業界を席巻、創業8年足らずで売上70億円を達成した。

 プロモーションに関しても、アルコール度数55%のビールをリスの剥製のパッケージで発売、大通りを戦車で駆け抜けて新製品を告知、英国議会議事堂に創業者2人の裸の影を映し出す、など破天荒なものばかり。眉をひそめる人もいるが、彼らの「パンク精神」に対しては心酔するファンも多い。

 ワットは「ターゲット市場なんて言葉は無視しよう」と提唱する。なぜならその事業のことを来る日も来る日も考え続けてきた経営者自身が、顧客とは誰かを一番知っているからであり、「あなた(著者注:経営者)の魂にはブランドのDNAが焼き付いている」からだとしている。

経営者や社員が「オタク」ともいえるユーザー