顔認識システム「ビーサイト」本格展開 エイコム・飯塚吉純社長


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 デジタルサイネージなどを使って効果的なマーケティングデータの取得を目指す企業が増える中、手軽さとコストパフォーマンスに優れる顔認識システムで商機をうかがうベンチャー企業が現れた。性別や年齢などの情報を収集する顔認識マーケティングツール「BeeSight(ビーサイト)」を開発したエイコムで、昨年11月に開催された「革新ビジネスアワード2017」で大賞に輝いた。飯塚吉純社長は「受賞をきっかけに販売を増やし、19年7月期に売り上げ1億円を目指す」と意気込む。

 --大賞受賞で変化は

 「問い合わせが増えた。社内的には『賞を取る』を宣言していたが、これまでトライアンドエラーのエラーばかりだった。受賞したことで、新ビジネスに取り組んでいくことの大切さを改めて感じた。ビーサイトを具体的なビジネスに育てていく」

 --実績も上がっている

 「小型デジタルサイネージのトップメーカーimpactTV(東京都渋谷区)と業務提携し、店頭における棚前行動購買分析システムを共同開発。江崎グリコが昨年11月11日の『ポッキー&プリッツの日』の前後1週間、マーケティングデータの取得に使った。大手マンションデベロッパーや大手化粧品メーカーなども導入、試験的だが約100台が稼働した。今後も多くの企業とコラボレーションしてビーサイトの普及を図り、顔認識マーケティングを一般化させたい」

 --ビーサイトの主な機能・サービスは

 「基本を押さえた『サイネージモード』は曜日や時間ごとの再生スケジュールを設定できるほか、視聴者の属性を認識して男性向け、女性向けといったコンテンツの表示切り替えが簡単に行える。こうした顔認識による属性の取得に加えて、通過人数を計測して視聴率を集計できる『ピープルカウンター』も設置できる」

 --得られるマーケティングデータは

 「サイネージで表示されたコンテンツや商品に興味を持って視線を向けた人々の顔をカメラがとらえ、70カ所の特徴点(トラッキングポイント)を解析して年齢や性別のほか、幸せや驚き、怒りなど6種類の表情をリアルタイムに計測。服の色、ヘッドポーズ(視聴者の向いている方向)なども分かる。取得した情報の精度は90%なので、マーケティングに利用できる」

 --導入コストは

 「従来の顔認識システムはサーバーを設けてネットワークにつなぐ必要があるためコストは高くなる。ビーサイトはネットワーク接続が不要なため、大手メーカーの5分の1から10分の1という大幅コストダウンを実現できた」

 --品ぞろえは

 「顔認識エンジンは当初、欧州の画像認識メーカーから調達していたが、日本人のデータに強い日本メーカー製を加えた。さらに他のエンジンも探しながら導入していく」

 --販売にも力が入る

 「棚前行動購買分析システムで1万台の販売を見込む。加えて3月から顔認識機能付CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を販売する。複数のサイネージをネットワークを介して配信管理するCMSに顔認識機能を付加。視聴者に適したコンテンツを表示し、購買意欲を喚起する。既存のサイネージでは視聴者属性に合わせた表示はできなかったうえ、複数拠点に設置した場合はそれぞれのサイネージでコンテンツの更新や顔認識設定が必要。この市場はブルーオーシャン(競争相手のいない未開拓市場)となるので期待している」

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【プロフィル】飯塚吉純

 いいづか・よしずみ 1985年東放学園専門学校放送技術科卒。映像制作会社を経て2002年アーツエイハン、11年エイコムを設立し社長。53歳。東京都出身。

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【会社概要】エイコム

 ▽本社=東京都新宿区新宿1-18-13 協健新宿1丁目ビル

 ▽設立=2011年8月12日

 ▽資本金=1000万円

 ▽従業員=3人

 ▽事業内容=顔認識技術、デジタルサイネージ機器、コンテンツ制作