【神奈川発 輝く】レーベン販売 野菜ピーラー、利用者目線で多くの工夫

高部篤社長
高部篤社長【拡大】

  • レーベン販売の社内キッチン。商品開発のためのアイデア創出の拠点だ=横浜市西区の同社本社
  • 「ののじワンダーピーラーシリーズヌードルピーラー」

 600以上の特許や意匠登録を保有し、さまざまなオリジナル野菜ピーラーの新商品を続々と投入して話題を集めている「レーベン販売」。野菜を編み目だったり、麺状だったりとユニークな形状で安定的に削れるという消費者サイドに立ったきめ細かい商品開発を進めて、調理の楽しさを提供し続けている。特許などの権利を先行取得してから商品を販売するスタイルで差別化してきた高部篤社長は、昨年6月に分社化して販売会社「ののじ」を設立。販売は若い優秀なスタッフに任せ、「私はさらにものづくりに邁進(まいしん)したい」として、さらなる新商品開発に力が入る。

 横浜駅から歩くこと約15分。オフィスビルの通路の奥の扉を開けると、商品開発のための社内キッチンが目に飛び込んでくる。高部社長をはじめ、社員がアイデアを創出する拠点だ。

 もともとは高部社長が仲間とソフトウエアの開発企業として前身のレーベンを設立。ただ、ソフト業界は「世界中で競争が激しいことに加え、『開発に10年かけても、成功するかは未知数』というリスクがつきまとった」(高部社長)。一方で「衣食住は大切で、動力に頼らない手道具が一層重要になる」との思いから「ソフトのようになかなかお客さまに伝わらないものよりも、すぐに伝わって表現できる製品はないか」と発想を転換した。

 ◆デンタルフロス契機

 1998年ごろ、柄を動かすと2本の糸が歯間の汚れを容易にかき出すデンタルフロスを開発したのをきっかけに、3連のループ形状で、ソフトで痛くなく、しっかり耳垢をかき出せる耳かきを発売して反響を得た。ただ、同社にとってその後を決定づける最初の大ヒットとなったのは特徴あるスプーンだ。

 耳かき製造メーカーのスプーン工場を見学した際に「深さがあってスープをたっぷりすくえるものが良いスプーン」と聞いた。だが、過去にカツカレーを食べた際の不便さから「柄がまっすぐで浅いスプーンだったら、カツも切りやすいし、カレーも口に運びやすい」と考えた。そこで高部社長は、人間工学に基づいてスプーンのすくう部分の縁が広くて唇にひっかかりにくく、かつ浅いながらもこぼしにくい構造を思い立った。

 型から大量生産することを得意としている委託業者は当初、難色を示したが、徐々に理解を得られるようになった。商品は「こぼさない、魔法のスプーン」として、子供の離乳食用に最適などと口コミで広まった。

 ただ、評価が高い製品は模倣されやすいことも事実。高部社長は「開発して、事前に特許申請などをした上で販売することにこだわっている」という。2018年1月11日時点で、実用新案192件、意匠登録は438件に上る。権利を押さえることで模倣を防ぎ、価格競争に巻き込まれない点でも有効だ。

 ◆特許庁から表彰も

 今ではスプーンを筆頭に、簡単にさまざまなカットができる野菜ピーラーも主力に成長。さらには学校給食用の調理器具、はしやおろし器具までカテゴリーが拡大した。

 いずれも利用者目線に立ち、多くの工夫や意匠、知的財産(知財)がさりげなく盛り込まれている。

 09年には特許庁の「知財功労賞」も受賞している。ただ、高部社長は「保有する特許を独占するつもりはない。市場活性化のためにも、特許などの権利を使用したい企業があれば使ってもらいたいと考えている」と話す。

 健康志向から野菜の摂取がさらに求められる追い風もあり、いろいろな食べ方を楽しめる野菜ピーラーのニーズは高く、まだまだ商品化が控える。高部社長は、すでに次の商品開発のことで頭がいっぱいだ。(那須慎一)

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【会社概要】レーベン販売

 ▽本社=横浜市西区北幸2-8-19 横浜西口Kビル ((電)045・317・5380)

 ▽設立=2002年5月

 ▽資本金=6000万円(2018年1月時点)

 ▽従業員=7人(同)

 ▽売上高=約11億円(17年7月期)

 ▽事業内容=生活器具の開発や企画、販売

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 □高部篤社長

 ■世の中変える商品で新しい文化を提案

 --昨年、販売部門を「ののじ」として分社化した

 「レーベン販売として売り上げが10億円を超えたとき、今後はワンマン経営では立ちゆかなくなると判断したことと、自分自身は開発などのものづくりに専念したかったということもあり、販売会社として『ののじ』を立ち上げ、分社化した。ののじの経営は長男に任せた」

 --自社で保有する豊富な知的財産をどう生かしていくか

 「保有する知的財産は多いが、人に説明することは難しい。堅いイメージを崩し、いかにその特許技術などを、主婦の皆さまなどに分かりやすく説明し、分かってもらうかが重要だ。今までにない、世の中を変えるイノベーションを起こす新商品をどんどん提供していくことが必要と考えている」

 --ののじは、どんな会社にしたいのか

 「ののじの社員には、私からあれこれ指示するのではなく、すでにある知的財産などをどう活用するか、自分自身で考えてもらうようにし、社員一人一人のアイデアなどで自主的に動いてもらえる組織にしていきたい」

 --どのような経営を進めていきたいか

 「特許や意匠登録など豊富な知財を活用し、新商品を出し続けていく。もっとも、単に新しい商品を出すのではなく、人の役に立ち、新しい文化を提案できるようにしていきたい」

 --販売面の強化策は

 「すでに全国に販売ネットワークを持つが、インターネット通販というよりも、商品を置いていただける実店舗に社員や私が赴き、店員さんに実演するなどして使い方を知っていただき、商品の良さをアピールしていただけるスタイルで販売を強化していきたい。2016年度(17年7月期)の売上高は約11億円だったが、今後、ののじと合わせて100億円規模に拡大させたい」

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【プロフィル】高部篤

 たかぶ・あつし 東京デザイナー学院卒。1982年、ソフトウエア開発のレーベンを設立。89年、社長に就任。2002年5月にレーベン販売を分社化し、現職。67歳。茨城県出身。

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 ≪イチ押し!≫

 ■「波々刃」で野菜を麺状にカット

 「ののじワンダーピーラーシリーズ ヌードルピーラー」はダイコンやニンジン、ズッキーニなどの野菜を、波状の刃とガイドで構成する特許技術「波々刃(なみなみば)」によって途切れることなく丸麺状に削れて、実際の麺のような形にできるピーラーだ。

 刃が本体より外側に出ていて、幅の広い野菜も削れる「出っ刃構造」を採用したほか、柄の中央部にリングを設け、そこに指をかけて軽い力で野菜を削れる「指掛けリング方式」や、柄自体も波形にすることで食材にしっかりフィットするなど削りやすさを追求した。

 麺状に削った後は、野菜によっては生でサラダ麺のようにしたり、うどん風にゆでたり、パスタ風に炒めたりするなどさまざまな食べ方を楽しめる。定価は1296円。家庭用品店などで購入できる。