復興特需スリランカに期待 09年に内戦終結、日本企業商機うかがう

大型ホテルの建設が相次いでいるスリランカ・コロンボ中心部=1月(共同)
大型ホテルの建設が相次いでいるスリランカ・コロンボ中心部=1月(共同)【拡大】

  • スリランカのシリセナ大統領(右端)と会談する日本商工会議所経済ミッションの一行=1月、コロンボ(共同)

 インド洋の島国スリランカに、日本企業の注目が高まっている。人口は約2100万人と多くはないが、2016年の1人当たりの国内総生産(GDP)は3835ドル(約41万円)と、フィリピンやインドネシアを上回る。内戦の終結で「復興特需」が拡大しているほか、アジアや中東、アフリカの市場にアクセスしやすい地理的条件から、物流のハブ(拠点)としても成長が期待される。

 ◆物流ハブで成長も

 「スリランカを再発見した」。1月25日、スリランカを訪れた日本商工会議所の三村明夫会頭は、最大都市コロンボでの記者会見で満足そうに語った。日商の経済ミッションのスリランカ訪問は初めて。同日にはシリセナ大統領と会談、投資拡大に向け意見交換した。

 スリランカはここ数年、4%台の経済成長を続けている。09年に長年の内戦が終結、観光客が毎年10%以上増え続け、16年は200万人を突破した。日本からの直行便もあり、日本人観光客も増えている。中国が大規模な港湾整備に乗り出しているほか、コロンボ中心部では大型ホテルの建設も進む。

 昨年6月には三井物産が10年ぶりに事務所を再開。森本卓アジア・大洋州本部長は「一国の市場としては小さいが、交通の要衝としての有利さは大きい」と指摘。流通大手も相次いで進出し、16年に現地支店を開設した日本通運は「インフラ投資などの経済活動が活性化し、物流ニーズもある」(同支店)と評する。

 ◆富裕層「爆買い」も

 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、スリランカに進出している日系企業は約130社。食器メーカーのノリタケカンパニーリミテド(名古屋市)などが生産拠点を置く。コロンボの同社旗艦店では富裕層が「爆買い」し、売り上げは好調という。

 三村氏は「スリランカの魅力に比べると(進出企業数は)少ない。現状が伝わっていない」と課題を挙げる。ジェトロコロンボ事務所の小浜和彦所長も「国としてどの産業に力を入れるかが定まっておらず、市場の魅力を生かし切れていない」と話す。

 ビジネス環境の整備の遅れもある。税制などの法令が頻繁に変更され、現地の日系企業からは「先を見通した仕事ができない」との不満もある。

 日商との経済セミナーに出席したマリク・サマラウィクラマ開発戦略・貿易相は「投資手続きの簡略化など、貿易促進に向けた取り組みを進めたい」と述べた。日本政府はスリランカとの経済連携を強める姿勢で、商機をうかがう日本企業の熱視線は続きそうだ。(コロンボ 共同)