【広報エキスパート】日本製紙 木とともに未来を拓く 情報発信


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 □日本製紙 広報室長・藤田美穂氏

 --紙の需要が落ち込んでいます

 2008年のリーマン・ショックの影響で、情報媒体としての紙の需要が大きく落ち込み、元の水準に戻らないまま、11年に東日本大震災が発生。基幹工場の石巻工場(宮城県)が大きな被害を受けました。当初は閉鎖の噂が流れるなど、地元の経済への影響が心配されましたが、復興を宣言し、その過程で多くのメディアの取材を受けました。その後も、少子化やITによるペーパーレス化の進展で、紙の需要は減少傾向が続いています。こうした中、14年に馬城文雄社長が就任。第5次中期経営計画策定に合わせ、「日本製紙グループが、この世の中に存在する意義をもう一度考えてみよう」ということになりました。

 ◆新繊維素材が強み

 --具体的には

 広報室が事務局となり、役員やグループ会社社長へのインタビューに加え、各社の部長全員に「総合バイオマス企業としてのイメージ」「強みと弱み」「重視したい価値」についてのアンケートを実施。当社には紙の原料である「木」を扱う高度な技術があることから、再生可能な資源である「木」からさまざまな「価値ある製品」やサービスを生み出し、「人々の豊かな暮らしと文化の発展に貢献する」と、企業グループ理念を明確化するとともに、新しいスローガン「木とともに未来を拓(ひら)く」を掲げました。

 --新繊維素材「セルロースナノファイバー(CNF)」は、それを具現化したものですね

 CNFは「木」のセルロースをナノメートル(ナノは10億分の1)級に解きほぐした超極細繊維です。軽量・高強度で熱による変形が少なく、木材由来でリサイクル可能、安価で製造できる特長があり、今非常に注目されています。当社では、約10年前からCNFの開発を進めてきました。15年には世界に先駆け、抗菌・消臭機能を組み込んだCNFシートの開発に成功。大人用紙おむつなどヘルスケア製品に実用化しました。さらに、自動車部品や家電に使われる樹脂の補強材など幅広い産業への活用が期待されています。

 ◆第6次中計スタート

 --昨年、立て続けにCNF製造設備が竣工(しゅんこう)しました

 現場をお見せし、当社の意気込みを伝えることに広報の主眼を置きました。まず4月に石巻工場で量産設備が完成。竣工式には関係者約100人にご参加いただき、地元紙記者に加え、東京からの新聞・雑誌記者約20人に取材していただきました。6月末には富士工場(静岡県)で実証生産設備が稼働し、翌月に見学会を開催。メディア、行政、大学関係者など約60人にお集まりいただきました。9月には江津工場(島根県)でも量産設備が完成。地元紙など約10人の記者が取材に来てくださいました。広報室のメンバーにとっては経験を積む良い機会になりました。

 --広報体制は

 広報室のメンバーは5人。メディア対応、グループ広報誌「Dyna Wave」の発行、ウェブサイトの管理、展示会の運営などを行っています。入社して25年になりますが、その9割は広報室で仕事をしてきました。そのときは大変だったと思ったことも、振り返ってみると全てに意味があり、糧になっていると感じます。4月からは、第6次中期経営計画がスタートします。理解と共感を得られるような情報発信を心掛けていきたいと思います。(エフシージー総合研究所 山本ヒロ子)=随時掲載

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【プロフィル】藤田美穂

 ふじた・みほ 1992年早大教育卒、山陽国策パルプ(現日本製紙)入社。総務部に配属、社内報制作に携わる。98年林材部海外植林推進室。2000年広報室。02年英国へ語学研修。03年広報室。07年広報室長代理。15年から現職。