今年の冬は、日本列島は記録的な大寒波に見舞われた。降雪地帯はもちろんのこと、関東地方も大雪が降った。それもシャーベットのような水分を多く含んだ雪ではなく、固く締まった粉雪が都心の空を舞った。雪への耐性のない都会っ子は、大いに混乱したのである。
そんな大寒波のある日、ちょっとしたトラブルが起こった。自動車雑誌の企画で雪国にドライブへ行ったのだが、前日の夜に宿泊地に宿をとり、翌朝取材に出かけようとしたら、取材車だったディーゼルモデルのエンジンが始動しないとアルバイト君が頭を抱えている。
「エンジントラブルです。どうしましょう」
顔面蒼白なのだ。
だが、すぐに原因は判明した。ディーゼル燃料が凍ってしまったのだ。そう、アルバイト君は昨晩の東京を発つ時に、燃料を満タンにして来ていた。だがその軽油は寒冷地仕様ではなく、外気温マイナス15度にも達した雪国では機能しなかったのである。
そこでこのコラムのネタを思いついた。関東地方出身のアルバイト君は、軽油が凍結しやすいことも、寒冷地仕様の軽油の存在も知らなかったのだ。この機会に伝えておかなければならないぞと思ったわけである。