【遊技産業の視点 Weekly View】ギャンブル依存対策に拘泥する日本


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 □シークエンス取締役、LOGOSインテリジェンスフェロー・木村和史

 政府は2月15日、統合型リゾート施設(IR)内のカジノに関し、日本人の入場回数の上限を週3回、月10回まで(本人確認や入場履歴はマイナンバーカードを提示することで対応)とする規制案、またカジノのゲーミング区域の面積についてもシンガポールのカジノを参考に1万5000平方メートル以下に抑え、IR全体の3%以下とする考えを自民党・公明党の関係部会に示した。

 これら入場回数やカジノ面積の上限を盛り込んだ規制案は、与党の議論を経て政府が今国会への提出を目指すIR実施法案に盛り込まれる見通しだという。さらに政府は21日、日本人を対象としたカジノ施設の入場料を1人2000円とする案をまとめて与党に示したが、そこでも「低すぎる」などの異論が出ていると各メディアが報じた。カジノ実現に向けた動きが加速するなか、さらに世間の注目が集まる日本版IRだが、今回はロシアのIR事情に触れてみたい。

 かつて極東の軍港であったウラジオストクに、プーチン大統領の肝煎りで開発が進んだプリモリエ・エンタテイメントゾーンがある。同施設はロシア国内ではカジノ特区として4つの計画がある中でも最大規模を誇り、総敷地面積は約186万坪と東京ドーム約130個分。韓国・仁川国際空港そばのIR施設・パラダイスシティが約10万坪であることを踏まえても、その巨大さがうかがえる。ここには2015年10月にホテルとカジノを伴って開業したロシア初のIR施設「TIGRE DE CRISTAL」のほか、3カ所でのIR計画が進んでいる。

 なお、ロシアが国策としてウラジオストクを極東開発の拠点としているのは、中国東北部の大都市圏や韓国、日本から空路でいずれも2時間以内の距離に位置する地理的環境にある。ウラジオストクの人口は約60万人、内国人もカジノへの入場は可能だが、背景を考えればターゲットは完全にインバウンドということになる。この意味で韓国や日本版IRとの競合は必至となってくるのだが、冒頭で触れたように内国人のギャンブル依存対策に拘泥している日本の現状からは、残念ながらインバウンドという本来のIR実現の目的や国際競争力のあるIRの姿は見えてこない。

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【プロフィル】木村和史

 きむら・かずし 1970年生まれ。同志社大学経済学部卒。大手シンクタンク勤務時代に遊技業界の調査やコンサルティング、書籍編集に携わる。現在は独立し、雑誌「シークエンス」の取締役を務める傍ら、アジア情勢のリポート執筆など手掛ける。