仮想通貨交換業者が自主規制団体設立で合意し、課題だった安全管理体制などの統一ルール策定に向け、ようやく動き出した。交換業者大手コインチェックの仮想通貨流出によって失った業界の信頼を、一丸となって取り戻したい考えだ。とはいえ、安全性を追求しすぎれば収益力が落ちかねないことから、事業者の間にはルール作りの意識に温度差もあり、すんなり話がまとまるかは見通せない。
「このあたりで業界が1つになるターニングポイントだ」。交換業者大手ビットフライヤーの加納裕三社長は2日の記者会見でこう述べ、業界が一致団結して信頼の回復に努めることが急務だとの認識を示した。
昨年4月に施行された改正資金決済法では技術革新への対応に配慮し、交換業者のルールは利用者と自社の資産の分別管理など最低限にとどめた。その上で交換業者が事業者団体を設立できるよう規定し、利用者保護などの取り組みは自主規制に委ねることにした。
ただ業界では、日本仮想通貨事業者協会(JCBA)と日本ブロックチェーン協会(JBA)が、それぞれ別々に活動。金融庁は「自主規制団体は1つ」と統合などを促してきたが、両団体は主導権争いで対立し、議論は進まなかった。
しかし巨額の仮想通貨流出を招いたコインチェックのずさんな業務実態が明らかになり、業界の信頼は失墜。危機感に駆られ、新団体設立の協議が加速した。
今後のルール作りは「セキュリティーなどが重視される」(加納氏)。一方で「安全性を重視しすぎると技術革新や事業展開が縛られかねない」(業界関係者)との声もあり、交換業者も一枚岩ではないとみられる。市場の健全な発展に向けた実効性あるルールのため、交換業者がどこまで協調できるかが問われる。(中村智隆)