【埼玉発 輝く】小林総研 発煙筒に代わる「非常信号灯」で業界に風穴

非常信号灯の抜き取り検査。1月には1万本の全数検査も実施した。「全て安全のため」と小林操二社長=1日、埼玉県川口市
非常信号灯の抜き取り検査。1月には1万本の全数検査も実施した。「全て安全のため」と小林操二社長=1日、埼玉県川口市【拡大】

  • 小林操二社長
  • 2017年に従来製品を改良して発売した「非常信号灯」。懐中電灯として使用できるようライトを取り付けた

 埼玉県川口市の住宅街に社員7人で6億円の売り上げを誇るニッチ製品のトップメーカーがある。自動車の「非常信号灯」を開発・製造する「小林総研」。自動車が道路で事故や故障を起こした際、通常は発煙筒をたくが、この発煙筒に代わる製品が非常信号灯だ。光源は発光ダイオード(LED)を使用している。現在、LEDを使う非常信号灯では同社の製品が唯一、国土交通省保安基準適合品として認められている。

 ◆長女の事故きっかけ

 「いろいろ考えて形にするのが好きでね」と話すのは、これまで特許や意匠権など約60件取得してきた小林操二社長(74)。「趣味が仕事」というだけあって、常に新しいアイデアを考え続けている。同社が非常信号灯を事実上、独占できているのは実用新案を取得しているためだ。

 発煙筒は国内で年間約1000万本販売されているというが、非常信号灯はその10%に相当する年間約100万本を販売。車検時の交換需要がメインで、「本当はディーラーから『もっと売ってほしい』との声をもらっているが、人手が足りないので対応できていないのが現状」と明かす。

 小林社長は19歳で風呂釜の製造会社を起こした。職人を雇い、見よう見まねで技術を覚えたという。時代は高度成長期。建て売りの戸建てが飛ぶように売れた時代だ。「2年で自社ビルが建った」と振り返る。

 その後、建設現場や造船所などで鉄を切断するバーナーの製造会社を立ち上げ、東南アジアの造船所を駆け回った。しかし、オイルショックを受け事業を縮小。それまでに得た資金を基に、いろいろな製品の開発に特化するようになった。

 このころ、力を入れて開発したのがLEDを使った道路標識。小林社長の長女で、現在同社の経理を担当する縄野かほる取締役が交通事故で全治3カ月の重傷を負ったのがきっかけだった。「事故現場の標識が曲がっていて隠れていた。『不運の事故をなくしたい』との思いが製品開発への原動力だった」(小林社長)と親心がのぞく。

 1994年秋、横浜・みなとみらいで「夜間の交通安全国際会議交通安全テクノロジー展」が開かれた。そこに自ら開発した自発光道路標識「止まれ」や、標識破損防止金具「復元太郎」などを展示していると、自動車メーカー関係者から「発煙筒をLEDにしてみたらどうか」とアドバイスをもらった。これが小林総研の設立の原点となった。

 ◆消えない灯り

 「(発煙筒は)『そもそも使い方が分からない』『使用しても救急車やレッカー車が来る前に消えてしまう』といった声が多かった。調べてみると、メーカーが3社程度の寡占状態で『自分が業界に風穴を開けよう』と考えるようになった」。小林社長は当時の思いを語る。

 翌年、1号製品が完成したが思うように売れなかった。それもそのはず、発煙筒の価格が1000円程度だったにもかかわらず、3300円もしたからだ。この現実に「発煙筒と勝負できるものを作ろう」と発奮。2007年に発煙筒とほぼ同じ価格の非常信号灯を発売した。

 すると、ディーラーやカー用品店から注文が殺到。長年の努力が報われた瞬間だった。

 日本自動車工業会が公表している16年末現在の国内の自動車保有台数は約7775万台。人口減少時代を迎えている日本だが、小林総研は新しい需要はまだいくらでも生み出せることを証明している。(大楽和範)

                   ◇

【会社概要】小林総研

 ▽本社=埼玉県川口市里1519-7 ((電)048・281・8461)

 ▽設立=1994年11月

 ▽資本金=1200万円

 ▽従業員=7人

 ▽売上高=約6億円(2017年9月期)

 ▽事業内容=非常信号灯などの開発・製造

                 ■ □ ■

 □小林操二社長

 ■毎日朝5時出社で品質チェック

 --実用新案や意匠権などの取得が、小林総研の高収益を支えている

 「中小企業が大企業と対峙(たいじ)するためには、これしかない。規模を追っていたら潰れてしまう。金融機関もうちのビジネスモデルに興味を持ってくれて、実際M&A(企業の合併・買収)のオファーも4、5件きている状態。ただM&Aには興味がない」

 --製品開発の醍醐味(だいごみ)はどんなところにあるか

 「製品が実際に使われるのが、開発者として最大の喜びだ。私はもともと何の技術も知識もなかった。まさにゼロから覚えていった。本気になれば何でもできるということだ」

 --「人手が足りない」というが、今後の販売展開は

 「毎日全国のディーラーから注文が来ているので、各地に支店を作りたいが、社員を相当数雇うことになるので難しい。そこで、全国の主要都市に販売代理店を置こうと考えている。早急に代理店を募集していきたい」

 --今年75歳になるが、後継者づくりは

 「ありがたいことにこの年になっても元気。あと5年は会社に携わろうとは思っているが、来年長女に社長を譲る計画を立てている。私は会長になる。長女は経理を20年務めてきたが開発・製造部門はほとんど分からないので、サポートしていくことになる」

 --仕事で大切にしていることは

 「人の命にかかわる製品なので妥協できない。製品は中国の協力工場で製造しているが、納品された製品は私と社員が必ずチェックしている。私は毎日朝5時に出社しているが、それは個数があまりに多く、私1人でも作業を進めておかないと間に合わないからだ」

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【プロフィル】小林操二

 こばやし・そうじ 高校中退後、19歳で風呂釜の製造会社「サンケイ」を設立。その後、建設現場で使用する切断用バーナーなどを製造する「太陽工業」を設立。51歳で非常信号灯の開発、製造を手掛ける「小林総研」を設立した。74歳。埼玉県出身。

                 ■ □ ■

 ≪イチ押し!≫

 ■懐中電灯の機能持たせた改良版

 2007年発売の改良品として17年に投入した「非常信号灯」。従来の点灯、点滅に加え、懐中電灯となるライトを付けた。

 収納する助手席下部の発煙筒ホルダーの形状が車種によって異なるため、トラックや商用車向けの「32ミリタイプ」、中型一般車や輸入車向けの「27ミリタイプ」、軽自動車や小型車向けの「27ミリストレートタイプ」の3種類に対応するように加工している。

 これはキャップを装着したり、本体を回転させて変形することで実現した。

 小林社長は「使い勝手の良さでは発煙筒に勝る。車検は新車で3年後、その後は2年おきに行われるので、交換需要を確実に取り込んでいきたい」と話す。