【Bizクリニック】ブランディングを意識したオフィスへ


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 □オフィスナビ代表取締役・金本修幸

 オフィスは単に働く場所、生産性を高める場所だけでなく、企業としての信用やブランドを社外に示す役割が重視されるようになり、それが昨今の空室率低下や賃料高騰にもつながっている。経営戦略に最適なオフィスを選ぶ重要性は今後ますます高まるだろう。

 都会のハイグレードビルで働くことに憧れる人は多い。東京都心部の人気エリアになると坪単価が4万円を超えるオフィスビルが存在し、外資系金融機関やグローバル企業などが入居している。中・小型ビルに入居している企業にも、オフィスをいかに魅力ある働きやすい場所にするかは企業ブランディング上、大きな課題となっている。

 一方、オフィスビルの貸主も、交通アクセスの利便性が少し劣る立地条件や、築年数が古いビルなどは賃料をリーズナブルに設定したり、ビルの顔となるエントランスや共用部分をおしゃれなデザインに改装したりすることで、より魅力的なテナント企業の入居を促そうとする。固定費を抑えながら企業ブランドを高めるオフィスビルに移転したいという企業が多いからだ。

 当社がオフィスを移転した顧客企業に実施している「移転について重視した点」のアンケートによると、賃料、初期費用、ビル外観、共用部、立地や交通アクセス、設備、管理状況などの項目があるが、やはりビルグレードをアップした企業は「社員が喜んでいる」「明らかに採用の応募が増えた」など企業ブランド向上を実感した回答が多い。

 内装面でもコーポレートカラーを反映させた受付エリアや、明るいポップ調の会議室、木目調で落ち着きのあるカフェのようなオープンスペースを取り入れるなど、ひと昔前にはなかった斬新なオフィスが増えている。クリエーティブな職種の増加やフレキシブルな職場環境など、新たなワークスタイルの台頭が要因だろう。従業員満足度を向上させるオフィス環境づくりに努める企業も多く、スタッフが交流しやすいレイアウト、仕事後に歓談できるバー空間、従業員の健康を考えたオフィスなども増えてきた。

 しかし、それでも立地面でブランディングに不利となるケースがある。この解決策として、都心好立地のハイグレードビルにある会社登記が可能なシェアオフィスを活用したり、本社機能の一部をこのようなビルに数十坪だけ借りたりして、採用や情報発信、人的交流の目的でブランディングを図る企業も増えている。

 また、オフィス内を撮影し、ホームページ上で公開している企業も増えている。おしゃれでカッコいい内装を写真や動画で見せることにより、ブランディングの向上につなげている。ドラマの撮影に使用されたことがきっかけで求職者の人気を集めた事例もある。

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【プロフィル】金本修幸

 かなもと・なおゆき 1993年関西大商中退、地場の不動産会社に入社。住信住宅販売(現・三井住友トラスト不動産)を経て、2002年8月オフィスナビを設立し、現職。オフィス仲介契約は累計約8000件に及ぶ。17年にはシェアオフィスサービス「BIZ SHARE」を札幌、神戸に開設。46歳。大阪府出身。