【スポーツi.】プロ野球は“生”で味わう臨場感が魅力

巨人対阪神の開幕戦で先制ソロ本塁打を放った阪神・福留孝介(中央)=3月30日、東京ドーム
巨人対阪神の開幕戦で先制ソロ本塁打を放った阪神・福留孝介(中央)=3月30日、東京ドーム【拡大】

 プロ野球が開幕した。知人に誘われて東京ドームでの巨人VS阪神の開幕戦をスタンドで観戦した。仕事柄、いつもは記者席で見ている。各球場の結果も気になるので、テレビ桟敷でCS放送のザッピングでチェックするのが常だが、やはり観客席での観戦はひと味違った。

 ◆観客数は年々増加

 一塁側巨人ベンチの近くに座った。巨人のチャンスになれば辺りが一体となって、声をからして選手に声援を送る。打てば叫声が響き、逆の結果にはため息も漏れたが、すぐさま「次だ~、次、頑張れ!」の温かい声がフォローする。ファンとは、ありがたい存在である。

 「ピーッ」。危険を知らせる笛が鳴った。ファウルボールがすぐそばに飛んできた。すかさずグラブを差し出した少年がナイスキャッチした。拍手が巻き起こった。見知らぬ者同士の触れ合いが生まれていた。勝敗の結果だけではなく、スポーツが介在して生み出すコミュニケーション。テレビでは、味わうことができない臨場感や熱気がそこにあった。

 巨人は開幕戦で、史上最高の4万6318人という観客を集めた。開幕3連戦の合計も過去最高の13万8274人。ちなみに開幕3連戦のセ、パ6球場の合計は64万2692人。すごい動員力である。

 プロ野球の観客動員数は年々増加傾向にある。昨年の公式戦はセが1402万4019人、パは1111万5444人。両リーグ合計、2513万9463人は過去最高。858試合が行われ、1試合平均の入場者数は2万9300人にもなる。ちなみに、昨季のサッカーのJ1リーグは306試合で577万8178人、1試合平均は1万8883人。前年比5.1%増と微増しているが、やはり王者・プロ野球の地位は揺るぎない存在なのである。

 ◆地元特化のサービス

 プロ野球12球団の経営状況はどうか。2015年度の数字がある。

 グループ会社との連結決算をしているところもあり、金額は推定になる。セは253億円を売り上げた巨人を筆頭に広島が142億円、阪神が124億円、DeNAの103億円など合計797億円。パはソフトバンクの274億円をトップに100億円以上売り上げている球団は日本ハム、西武、楽天が続き合計は762億円。両リーグ合わせると1559億円。“右肩上がり傾向”にある。(出典は会社四季報業界地図17年度版、東洋経済新報社)

 これには理由がある。地方創生である。1989年にホークスが福岡に移転、04年には日本ハムが北海道、05年からは新規参入球団として楽天が仙台に本拠を置いて地域密着型の経営モデルに着手した。地元に特化したファンサービス、イベント展開が熱いのである。

 既存球団のDeNAは横浜スタジアムを株式公開買い付け(TOB)で買収することによって自前の球場として収益構造を改善、新たなボールパーク化を推進。これまで野球に興味のなかった層を取り込むことによって集客など底辺拡大で成功を収めている。各球団の努力もあって球場周辺はかつてないほど活況を呈している。

 北海道・札幌に本拠を置く日本ハムが先日、23年の開場をメドに自前の新球場建設に乗り出すことを発表した。球場使用料も含め年間約15億円も負担するのに、球場内の飲食等の利権は球場に帰属する“間借り”。DeNA同様に収益構造の抜本的見直しを図ることで、新たな道を進むことになった。

 確かに、人気の指針といわれる地上波のテレビ視聴率は年々下降傾向にある。巨人を例に挙げれば、今年の開幕戦は9.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。かつて83年には平均27.1%の“キラー・コンテンツ”も見る影もないが、それぞれの地域では“おらが球団”が、通年を通して20%前後の数字を出している。

 そもそもファンの視聴形態も変化している。途中で切られてしまう地上波より完全中継を試みるCSやBSにシフトする。さらに今年からプロ野球に参入したDAZNの中継(巨人主催試合を除く)では、スマートフォンで場所を選ばずどこでも見られる。

 プロ野球産業は“新たな道”で進化しているのだ。(産経新聞特別記者 清水満)