【和歌山発 輝く】ふみこ農園 梅干しやみかん…見た目も華やかな加工品に

ふみこ農園本社=和歌山県有田川町(福井亜加梨撮影)
ふみこ農園本社=和歌山県有田川町(福井亜加梨撮影)【拡大】

  • (福井亜加梨撮影)
  • ふみこ農園の社内売店。梅干しやフルーツを使った商品も販売されている=和歌山県有田川町(福井亜加梨撮影)
  • 成戸文子社長(福井亜加梨撮影)

 黒潮の影響で一年を通じて温暖な気候と長い日照時間に恵まれ、梅や温州ミカンの生産量が日本一を誇る和歌山県。県中部の有田川町で、梅干しや果物の加工品などを手掛ける「ふみこ農園」は、成戸文子社長(69)のアイデアから生み出された300種類以上の商品を製造・販売している。ミカンをまるごと果汁やシロップで煮込んだ「コンポート丸ごと温州みかん」や、梅をはちみつと砂糖で漬け込み、半年間タンクで眠らせて作る「梅グラッセ」などが看板商品。百貨店や量販店への卸売りのほか、近年はネット販売の売り上げも伸びている。

 ◆嫁ぎ先から独立

 和歌山市で生まれ、1970年に同町の麺工場「ナルト製麺」(現ナルト)に嫁いできた成戸社長。家業を手伝っていたある日、客から「子供たちが喜ぶ五色うどんの開発をお願いします」との手紙が届いたことをきっかけに、色つきのうどんの商品開発に取り組むことになった。

 まずは水の代わりにミカン果汁を使ってみたが、酸が強いミカンには、傷みやすいという欠点があり断念。次に、ミカンとともに和歌山を代表する食べ物として梅で挑戦した。

 梅でも最初はうまくいかなかったが、興味を持ってくれた企業が「おもしろいからしっかり頑張ってください」と、無償で梅肉などを提供してくれたことも。成戸社長は「みなさんの優しさに触れて、やめるとはいえなくなってしまった」と笑みを浮かべる。

 試行錯誤の末に88年、発売が開始されたピンク色の「梅うどん」。普通の麺よりも原料費が高く、製造の手間もかかっているため、成戸社長は「一般市場では売れにくいだろう」と自ら県内外の百貨店や量販店の店頭に立ってPRした。

 試食販売で梅うどんに大葉や梅干しをのせるうちに自社で梅干しを漬けることを考案。93年に梅干し製造が中心の会社「ふみこ農園」として独立し、96年には株式会社となった。

 ◆ギフト商品で人気

 梅は多くを塩漬けで梅干しにしていたが、「塩を使わず、おいしさをそのまま生かしたスイーツも作りたい」と糖漬けに着目。こうして誕生した「梅グラッセ」は、無添加で、香り高いスイーツとして「食品のミシュラン・ガイド」とも呼ばれる「iTQi(国際味覚審査機構)」で優秀味覚賞を受賞。観光庁主催の「世界に通用する究極のお土産」にノミネートされたほか、豪華客船飛鳥の船内でも販売されている。

 2001年に柿を国内で初めて百貨店のギフトに掲載したのも同社だった。販売を開始した「あんぽ柿」は、上品な甘みと、水分率60%のとろけるような味わいが特徴。アイデアは、無人販売所で縄につるした柿が売られていたのを見たところから生まれたという。

 近年は、桜やゆずなどと一緒に漬けた梅干しやフルーツ甘酒なども開発。見た目も華やかでかわいらしく、贈り物として選ばれている。

 小ぶりのミカンを木箱に詰めて届けるギフトも人気で、「黄色い宝石箱みたい」と驚かれることも。「ギフトは感動をしていただくことが大事だと思っています。喜んでもらえるものを作っていけたら」と成戸社長。「今後は捨てられていたものや、今まで注目されていなかったものに含まれる栄養なども余すことなく使っていきたい」と語った。(福井亜加梨)

                  ◇

【会社概要】ふみこ農園

 ▽本社=和歌山県有田川町野田594-1 ((電)0737・53・2350)

 ▽設立=1996年10月

 ▽従業員=35人

 ▽事業内容=紀州南高梅、梅加工品などの製造販売、特産品、農作物の販売

                ■ □ ■

 □成戸文子社長

 ■“もったいない”の発想から商品開発

 --「梅グラッセ」や「あんぽ柿」など300種類以上の商品を開発しているが、アイデアはどこから生まれるのか

 「捨てるところのないような商品づくりをモットーにしている。皮に傷が入った規格外品でも、皮をむいたらきれいで、味はおいしい。今では会社の“顔”の一つになった『柿チップ』も、規格外品から生まれたものだが大変人気があって、いつもすぐに売り切れる。また、ミカンの陳皮を原料にしたキャンディーは、近畿大学の先生から『舌の掃除にもなる』と言ってもらえたこともあった」

 --2013年には、地域経済の発展に向けて努力する先進的な女性経営者をたたえる「キラリ! 輝く女性ビジネス大賞」を受賞した

 「商品開発にも生かされた“もったいない”の発想は、女性だから特に思っていたことかもしれない。嫁いでくるまでは、畑の農作物を見たこともなかったくらい。でも、料理が大好きだったので、商品開発は楽しくて、身を惜しまず働いてきた。商品が売れたり、認められたりすると、育てた子が賞を受けるようですごくうれしくて、もっと何かを作ろう、と思う」

 --座右の銘は

 「『ただ今を、精いっぱい生きる』。健康でないと商売はしにくい、といっても、健康管理ができないくらいに忙しくさせてもらって、ありがたいと思っている。今後は、健康寿命を大切にするという目線で、よりこだわって手間をかけた商品をつくっていけたらと考えている。また、付いてきてくれる社員には本当に感謝していて、みんなに楽しく生活してもらいたい。頑張り屋さんばかりだが、私の働く姿を見てもらうことが、社員の刺激になっていればうれしい」

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【プロフィル】成戸文子

 なると・ふみこ 高校卒業後、紀陽銀行に入行。1970年に和歌山県有田川町の麺工場に嫁いだ。梅うどんなどの開発に取り組むうち、梅干しの製造も開始。1996年に「ふみこ農園」を設立し、同県の特産品を原料にした商品開発、製造販売などを手がける。69歳。和歌山県出身。

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 ≪イチ押し!≫

 ■果実そのままジュレにとじ込め

 果樹王国・和歌山県ならではのフルーツをジュレにとじ込めたコンポート。果実そのものの食感や風味を残し、上品な甘さに仕上げられている。

 温州ミカンは丸ごと、ほのかな苦味が人気のハッサクは房ごと、種ができる前の若桃はひと口サイズ。ミカンや若桃をはじめとする6種類のフルーツが入った「若桃入りフルーツコンポート」などもある。

 「見た目も華やかに、果実の宝石箱をイメージして仕上げている」と成戸文子社長。セット商品はお中元や内祝いとしても人気で、日本ギフト大賞2017和歌山賞などを受賞している。

 1個1620円。ハーフサイズは864円。成戸社長は「グラスにウエハースやホイップ、ほかのフルーツなどと盛りつけて食べるのもおすすめ」とアピールした。