【Bizクリニック】働き方改革でオフィスも変わる

 □オフィスナビ 代表取締役・金本修幸

 労働力減少に伴う「1億総活躍社会」実現への取り組みとして「働き方改革」が重要なテーマとなり、過剰な労働時間の短縮を図るのと同時に生産性向上が求められている。オフィスの環境やレイアウト設計にも働き方改革が反映され、働きやすく、生産性を高める、仲介が数多く実現している。

 オフィスのハード面からみると、多くの企業で導入されているのは、自席をあえて固定しないフリーアドレス制のレイアウトだ。以前は、面積効率が上がることによるコスト削減効果が期待され流行したが、最近は、社員同士や部門間のコミュニケーションを促し、仕事のイノベーションや生産性を高めることを目的とした事例が多い。

 フリーアドレス制は「誰がどこにいるか分からない」「社員の勤怠管理が難しい」「社員の書類や備品の保管」といった問題が弱点とされてきた。しかし、社員に与えるスマートフォンに内線を統合することにより衛星利用測位システム(GPS)で社内での位置や勤怠状況を見える化できたり、クラウド活用によるペーパーレス化が進んだりしたことで問題が解決されてきた。これらのIT活用が、フリーアドレス制導入に拍車をかけている。

 また、社外で働くことを推奨する企業とその社員をサポートするコワーキングスペース、シェアオフィスなどの施設が増加している。子育て世代の社員の職住近接を実現しようと、大企業のサテライトオフィス活用も増えてきた。三井不動産が運営する「ワークスタイリング」や東急不動産の「New Work」などに代表される法人向けサテライトオフィスが全国規模で急速に増えてきている。働き方改革につながる一つの潮流といえるだろう。

 一方、残業を減らす取り組みでは、まず当社の事例を紹介したい。全国7拠点のオフィスにネットワークカメラを設置し、管理者だけでなく全社員がすべてのオフィスの状況をリアルタイム中継で把握できるようにした。残業は申告しないケースが多く、本人の申請に任せるだけでは限界がある。カメラ導入によってリアルタイムで在籍状況などが把握でき、働き過ぎの抑制はもちろん、拠点同士の業務連携がスムーズになり生産効率も高まった。

 大企業におけるソフト面の例では、日立製作所が「勤務時間インターバル」を導入、社員が次に勤務するまで最低11時間の休息確保を義務付け、10月から運用を開始する。パナソニックは4月から、出産や育児など家庭の事情を理由とした有給休暇を1時間単位で取得できるようにした。

 中小企業やベンチャー企業においても、人手不足の中で社員の“重み”が増している。残業時間の削減はもちろん、オフィス改革による生産効率改善を検討されてみてはいかがだろうか。

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【プロフィル】金本修幸

 かなもと・なおゆき 1993年関西大商中退、地場の不動産会社に入社。住信住宅販売(現・三井住友トラスト不動産)を経て、2002年8月オフィスナビを設立し、現職。オフィス仲介契約は累計約8000件に及ぶ。17年にはシェアオフィスサービス「BIZ SHARE」を札幌、神戸に開設。46歳。大阪府出身。