3時間→10分に短縮! 吉野山の偉業にみる観光地の渋滞解消法 (2/5ページ)

吉野山のシロヤマザクラ(写真=時事通信フォト)
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 収容能力を超える来訪者は、観光の質を悪化させる

 観光とは、その地域を日常生活圏としない人たちを対象とした事業である。したがって、交通対策は、観光マーケティングの必須の要素となる。

 たとえば、ハワイのような離島の観光地を思い浮かべてほしい。その振興にあたっては、地域外から就航する航空機の便数が増えないことには、状況を大きく変えることは難しい。

 さらに、ある一時期に集中して大量の訪問客の流入が生じる観光地においては、域内や周辺の道路で交通渋滞が深刻化しやすい。来客数の増加は望ましいことととはいえ、収容能力を超える来訪者は、観光の質を悪化させる。

 延々と渋滞が続き、6時間も7時間もクルマに閉じ込められ、ようやくたどりついても昼食の予約時間には間に合わず、せかされながら食事をかき込む。景勝地を訪れたはずなのだが、目にするのは人混みばかり。のんびりとショッピングどころではない--。これでは訪問客の満足度は低下する。そしてその先に、持続的な観光産業の発展を見通すことは難しい。

 さらにいえば、過度の交通渋滞の影響は、地域の住民の通勤、通学、通院、買い物などのための移動、あるいは緊急車両の通行などにもおよぶ。排ガスなどによる観光資源へのダメージも無視できない。

 地域の総合プロデュースという難問

 しかし日本の多くの観光地では、交通需要マネジメントは放置されていたり、あるいは手をつけてはいても、実質的には機能していなかったりする。

 なぜなら、そこには地域の総合プロデュースという難問が出現するからである。第1に大地主が少ない日本の地域事情のなかでは、多くの利害関係者に向き合わなければならない。地域全体としての観光客流入量の適切さだけではなく、個々の観光事業者や住民におよぼす個別の影響にも目を向けなければ、地域の総意をつかむことはできない。

 第2に観光客流入量の最適化は、ただでは実現しない。一定のコスト負担が必要である。交通対策の実質化には、課金の仕組、そしてその負担と分配をめぐる利害関係者の調整が欠かせない。

20キロ以上の交通渋滞が常態化