【eco最前線を聞く】「電力版ウーバー」 再生エネ導入を支援

丸紅の子会社スマーテストエナジーは、集めた再生可能エネルギー由来の電力などを顧客や市場にマッチングさせている
丸紅の子会社スマーテストエナジーは、集めた再生可能エネルギー由来の電力などを顧客や市場にマッチングさせている【拡大】

  • 原田悟氏

 □丸紅 海外電力プロジェクト第三部長・原田悟氏

 風力や太陽光など天候に左右される再生可能エネルギーの本格導入には周波数の調整や需給を安定させる調整機能が欠かせない。丸紅は2001年に電力自由化で先行する英国で小規模の再生エネ事業者の電気を束ねて卸売取引市場で販売するスマーテストエナジーを設立。いまや商業・産業向けでトップ10に入るほどに成長した。今年6月以降は人工知能(AI)などを活用し、周波数や需給を調整したり、顧客の資産を収益化するサービスを導入する。原田悟海外電力プロジェクト第三部長は「欧米やアジア、日本へ横展開したい」と意気込む。

 ◆「証明書付き」で販売

 --設立の経緯は

 「英国の電力規制緩和を機に参入した。風車が1つしかないような小水力を持つ農家をはじめ小規模事業者は電力を売りたくても、認可の取得方法や、どう電気を販売していいかが分からない。そこでスマーテストを設立して、風力や太陽光など小規模の再生エネ事業者の電源を集めて販売する事業に参画した」

 --強みは何か

 「大手の電力会社が行き届かない中小事業者向けにサービスを展開している。その積み重ねで再生エネの電源を増やし、契約する電源の設備容量は今や600サイト、290万キロワットに上る。08年には法人向けなど小売市場にも参入。英政府が発行するグリーン電力証書付きで販売したところ、環境意識の高い企業に評価された。電気がどこの再生エネ由来かの「原産地証明」付き商品に業界で初めて第三者機関の認証を付けて販売し、外部団体からも表彰された。トヨタ自動車の英国工場や百貨店チェーンのジョン・ルイス、高級スーパーのウエイトローズなどが顧客だ。電気を売りたい顧客と再生エネが欲しい顧客をマッチングする電力版ウーバーといえる」

 --新サービスは

 「最適なタイミングで電気を流したり、工場の発電を抑制してピーク時の対応をしたり、系統の安定化に協力してくれた企業は収入を得られる仕組みだ。再生エネは需給が急激に変化すると、系統の周波数に影響が出て、最悪は停電につながる恐れがある。そこで発電側にセンサーを付け、リアルタイムでさまざまなデータを収集し、電気を売りたい顧客と系統を安定させたい事業者や安定化のための市場とのマッチングを図る」

 ◆契約電源500万キロワット計画

 --具体的には

 「例えば蓄電池は周波数対応で、一番早く対応できる。英国では系統の事業者から電力が足りなくなる1時間前に、すぐに電力を供給できる蓄電池などの事業者を探して入札を通じて電気を回してもらう、バランシング市場がある。他にも周波数市場と呼ばれる市場がいくつかあり、新システムの導入を機にこれらの市場にも本格参入する」

 --その先の展望は

 「詳細は未定だが、天候データや過去の経験データも入れ、数分後や1時間後の需要や供給の予測も導入して一歩先読みしながら、顧客が自分の資産を収益化する最適化の仕組みを本格導入する。今回は英スタートアップ企業のオリガミ・エナジーのシステムを採用したが、次期システムは約250人の経験豊かな社員の知見を使い、できるだけ自社開発していきたい。新システムの導入で20年に向け、契約電源を500万キロワットに増やす計画だ。日本でも、周波数市場やバランシング市場の創設の議論が始まったところだ。欧米やアジアに加えて、子会社の小売電力事業者の丸紅新電力を通じて日本でもノウハウを生かしていきたい」(上原すみ子)

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【プロフィル】原田悟

 はらだ・さとる 神戸大経卒、1991年丸紅入社。丸紅メキシコ会社、丸紅パワーシステムズ出向、丸紅フィリピン会社などを経て、海外電力プロジェクト第四部副部長。海外電力プロジェクト第五部部長、今年4月から現職。50歳。島根県出身。