【知恵の経営】「働き方改革」法案を問う

 □経営学者・元法政大学大学院教授人を大切にする経営学会会長 坂本光司

 政府は6日、「働き方改革」関連法案を閣議決定し、国会に提出した。最大の改革は、所定外労働時間、つまり残業時間に上限を設けるというものだ。この改革が真に誠実に働く人々や、その人たちを支えている家族の幸せ創りに寄与するか、正直疑問でならない。

 厚生労働省などの資料によれば、残業時間の上限は年間720時間、1カ月では最長100時間以下という内容である。

 年間720時間ということは、1カ月当たりに直せば60時間、1日当たりでは3時間であり、1カ月100時間以下ということは1日では5時間ということになる。

 例えば、規定の終業時間が午後5時の会社では、3時間の残業をさせれば8時の退社、自宅に帰れば9時前後になると思われる。ましてや、5時間の残業をさせれば10時の退社、自宅に帰れば11時前後になってしまうことになる。

 人が一番幸せを実感できる場は、家族だんらんのひとときであり、その中核的な場は夕食時である。こんなにも遅くまで社員に残業をさせていたならば、家族だんらんの時間を、企業が奪うことになるといっても過言ではない。

 それどころか、こんな長時間労働をやっていたら、社員は心身ともに疲弊し、精神や身体に病気を発症する人も多数出てくるだろう。

 残業はやむを得ないときもあるとはいえ、問題はその程度である。結論から先に言えば、残業時間を規制するならば、月間20時間、年間では240時間までが限界である。つまり、現在、国会で議論されている時間の3分の1となる。

 この残業時間の長さは、根も葉もないことではない。

 筆者はこれまで8000社を超える、あらゆる業種の企業の現場を訪問し、その経営を調査している。社員を病気にさせない企業、社員が離職をしない企業、社員のモチベーションが高い企業、もとより業績が安定的に高い企業では、例外なく社員1人当たりの月平均残業時間が20時間以下、それどころか、大半の企業は10時間以下という結果だった。

 逆に言えば、社員を病気にさせる企業、社員の離職率が高い企業、社員のモチベーションの低い企業、さらに言えば赤字経営など、業績が常に低迷している企業では、残業時間が例外なく、1人当たり月平均で30時間以上にもなっていた。

 残業時間が長い会社は、業績が低いばかりか、社員の子供の数も少なく、こうした企業の存在が、この国の未来を危うくするのである。

 残業規制をするなら、とりあえず、月間20時間以下、将来は10時間以下が望ましい。そうすれば逆に知恵が出てくる。

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