大理石柄の「棚」に透明なフレームを置くと、海の絵が現れた-。消費者の関心が製品ごとの「モノ」から、サービスや体験といった「コト」に移る中、家電メーカーが「新体験」をキーワードにデザイン戦略の見直しを進めている。
ソニーは、イタリア・ミラノで22日まで開かれていた国際デザイン展に8年ぶりに参加。同社のデザインを統括する長谷川豊クリエイティブセンター長は、色や形といった従来の製品デザインからの脱却を強調する。
背板部分にディスプレーを内蔵した棚は、動画や写真を表示するだけでなく、置いたものに応じて柄が変化。ほかにも、鏡の前に立つと横にある壁にデッサン風の顔の画像が描き出されるなど、得意のセンサーや映像の技術を駆使し「新しい日常」をアピールした。
人工知能(AI)の普及でデザイナーの仕事が奪われるとの指摘もあるが、長谷川氏は「美的価値はなくならない。何かやってくれるだろうという『ソニーらしさ』も追求する」と話す。
パナソニックは、ミラノの美術館に直径20メートルの巨大な空気ドームを設置。真っ暗な内部に発生させた霧に、高精細な「4K」のプロジェクターで躍動する光の映像を描き、幻想的な空間を作り出した。
個別の製品は並べず、人の感性に訴えるデザインを打ち出す決意を込めたという。創業100周年を迎えたのを機に、今月、デザインの旗艦拠点を京都市に新設した。
家電事業の臼井重雄デザインセンター所長は「従来のモノづくりでは未来はない。日本企業として(デザインを通じ)『日本』や『憧れ』を世界に発信していく」と意気込む。(ミラノ 共同)