【Bizクリニック】オフィスも「居抜き物件」がトレンドに

 □オフィスナビ代表取締役・金本修幸

 「居抜き物件」といえば、飲食やクリニックなどの店舗物件が多い。しかし最近はオフィスでも居抜き物件が増えている。その理由は主に4つある。

 まず1つ目に、入居する企業にとって、大幅にコストを抑えられることが挙げられる。通常、オフィスを借りると間仕切り壁がなく、受付スペースも内装による造作は一切されていない。オフィスを内装造作する費用は坪当たり20万円が平均的といわれ、ある程度の広さだと結構な出費となる。居抜きオフィスであれば、壁や床の一部貼り替えやクリーニング程度で済み、イニシャルコストを抑えることができる。オフィスの移転は敷金や什器備品の新規購入など多額の費用がかかるので、内装工事費の軽減は魅力的だ。

 2つ目の理由は、退去する企業にも大いにメリットがあること。借り主には原状回復義務があり、退去の際には元の状態に戻して明け渡さなければならない。原状回復工事の相場は造作具合によるので一概には言えないが、造作が多いほど原状回復費は高額となる。居抜き物件として次の借り手がつけば、原状回復工事をせずに造作物や設備・備品を残したまま、次の借り主に引き継げる。貸主に預けた敷金はほとんど返ってくることになる。

 3つ目の理由は、貸主にもメリットがあること。まず原状回復の工事期間を短縮することで、効率よく次の借り主から賃料を回収できる。次に退去テナントが高額な費用をかけて作ったデザイン性の高いオフィスの価値をそのまま自社物件の魅力として、コスト不要で入居者募集に活用できる。居抜き物件ではテナント企業同士が引き継ぐには貸主の合意が必要となるが、このようなメリットがあるため、居抜きに対応するビルオーナーが増えている。

 4つ目の理由は、デザイン性の高いオフィスが増えてきたことが挙げられる。居抜き物件では、前入居者がこだわりあるインテリアや魅力的なデザインの造作にしているケースが多い。新しい入居者にとって、自分たちの発想を超えたデザイン力の高さや、自分たちの企業イメージとマッチしているオフィスであれば、高い付加価値を感じるだろう。

 ナレッジワーカー(知識労働者)の増加とともにクリエーティブなオフィスが増え、居抜きオフィスも増えてきたと筆者は分析している。今後、個性を強調した魅力的なオフィスが増加するにつれて居抜きのニーズも増えていくと予測している。

 当社のウェブサイトでは常時100を超える居抜きオフィス物件を紹介している。インテリア家具付きオフィスやデザイナーズオフィス、天井高が3メートル超のスタジオ利用可能なオフィス、一棟貸しのビルなど、個性的でデザイン性に優れた物件が多い。

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【プロフィル】金本修幸

 かなもと・なおゆき 1993年関西大商中退、地場の不動産会社に入社。住信住宅販売(現・三井住友トラスト不動産)を経て、2002年8月オフィスナビを設立し、現職。オフィス仲介契約は累計約8000件に及ぶ。17年にはシェアオフィスサービス「BIZ SHARE」を札幌、神戸に開設。46歳。大阪府出身。