【プロジェクト最前線】ブリヂストン ゴルフボール「TOUR B JGR」

JGRのキャッチコピーは「飛距離モンスター」
JGRのキャッチコピーは「飛距離モンスター」【拡大】

  • JGRを手にするブリヂストンスポーツの宮川直之さん
  • ブリヂストンゴルフガーデントーキョーでは、完全個室でのマンツーマン指導も受けられる

 □ブリヂストンスポーツ

 ■「データ」は顧客の声 大飛距離実現

 ゴルフボール市場は数多くのメーカーやブランドが入り乱れる群雄割拠の世界。調査機関から発表される1週間ごとの販売データでは、単品でシェア2%を確保するのは難しい。こうした中、そのラインを軽々とクリアし5%を突破するボールが登場した。ブリヂストンスポーツが3月に発売した「TOUR B JGR(ツアービー ジェイジーアール)」(JGR)だ。

 商品化を主導したボール企画部ボール商品企画担当課長の宮川直之さんは1993年の入社。約20年にわたってゴルフボールの開発業務に携わり、現在の部署に異動した。一般消費者の意見を吸い上げ開発にフィードバックさせる目的で、こうした交流人事が行われるケースはあるが、当時のブリヂストンスポーツにとっては一種の“挑戦”だった。

 ◆「内軟外硬」の設計

 宮川さん自身、開発担当の時代にはロボットの試打を通じた結果を重視する傾向が強かった。ところが現在は、顧客の声が最も重要な“データ”だ。 今回のプロジェクトの主なターゲットは、1ラウンドを90台で回る安定したスコアを残し、さらなる高みを目指すゴルファー。宮川さんは試打や実際のラウンドを通じて顧客との緊密な関係を構築し、率直な意見を聞き出していった。「なぜ、これだけ飛ぶのか」といった技術的な説明も得意としており、信頼感も大きい。

 こうした交流を通じ、「ちょっと固くて違和感がある」「柔らかくて物足りない」といった言葉を持ち帰り、古巣の開発スタッフに伝えた。開発部署はゴムや樹脂、コーティングといった各部位・技術ごとにチームが構成されており、「どの部分を固くしたら、こうした意見が出てきたのか」といった検証を商品企画チームと連携しながら実施。材料や構造などを決めていった。

 そしてたどり着いたのが、「ブースト パワー テクノロジー」という特許技術だ。具体的にはボール全体に「内軟外硬」という設計思想を導入。外部から内部にかけて滑らかに変形していく構造にすることで、効率的にボールが潰れてしっかりとはじき、高初速・低スピンによる大きな飛距離を実現した。

 販売戦略は通常、商品企画などが中心になって行うが、今回は開発チームのアイデアが採用された。手に取ってもらうには「どんなボールで、どういった工夫が凝らされているのかを簡単な表現で訴求することが必要」との考えに基づいて、店頭でのメッセージとして「ブースト パワー テクノロジー」の導入を提唱した。

 「飛距離モンスター」というキャッチコピーとの相乗効果とも相まって、売れ行きは好調だ。

 ◆企画・開発の連携奏功

 矢野経済研究所の調査によるとゴルフボールの2016年国内出荷市場は前年実績を上回ったが、金額ベースでは下回った。低価格のボールに対する人気が高い証左で、ランキングでも1ダースが2000円を下回る商品が上位を占めている。そうした中、5400円というJGRが4月にトップに立った。商品開発だけでなく販売に至る、商品企画と開発チームによる緊密な連係プレーが功を奏したのだ。

 ブリヂストンスポーツは昨年の国内ツアーで賞金王となった宮里優作プロをはじめ、多くの著名選手と契約を交わしている。プロの要求は細かく宮川さん自身、「ライバル他社に比べて性能が大きく劣っている。だから成績につながらないんだ」といったように、「親にもここまで言われたことはない」というほど怒られたことがある。

 以来、「負けないボールを作ろう」というのが仕事の原動力。世界を代表するプレーヤー、タイガー・ウッズ選手が各社のボールを自ら徹底的にテストし、16年にブリヂストンスポーツと契約を交わしたのは、商品企画・開発体制がうまく循環している証しと言っても過言ではない。

 スポーツの中で自らボールを選べるのはボウリングとゴルフぐらいだ。しかし、ゴルフの場合はクラブに比べるとボールの存在感は希薄。「一人一人に合ったボールが存在するという“ボールフィッティング”という考え方を普及させたい」と宮川さんは意欲を示している。(伊藤俊祐)

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 ≪焦点≫

 ■個別対応の少人数制教室展開

 日本生産性本部がまとめた「レジャー白書2017」によると、ゴルフコースで年に1回プレーしたことがある2016年のゴルフ参加人口は、前年に比べ210万人も少ない550万人だった。ピーク時の3分の1まで落ち込んだ計算だ。また、60~70代が半数を超えるなど高齢化も進展。このためゴルフ用品市場の活性化を図るためにも、ゴルフ人口の裾野拡大に力を入れていくことが喫緊の課題となる。

 その一環としてブリヂストンスポーツが展開しているのは、個別対応の少人数制スクール「ブリヂストンゴルフアカデミー」。4月時点で直営とフランチャイズを合わせ、118カ所で運営している。

 また、ゴルフの阻害要因である「高い」「遠い」という不満を取り除くため、東京・丸の内ではインドアゴルフレンジ「ブリヂストン ゴルフガーデン トーキョー」を稼働している。1打席を4人で利用した場合、1人当たりの価格は875円からという低価格に設定。会社帰りなどに最新のシミュレーターを活用して気軽にゴルフを楽しめるようにした。顧客のスキルを可視化・分析して、短期間で上達を支援するパーソナルレッスンも導入している。

 ゴルフ人口が減少する中、10~20代の女性は参加率が増えている。一方、10~20代の男性などは練習場に行くだけで実際にコースに出てプレーしていない比率が多い。こうした層をスクールなどを通じて大事に育成することが市場の活性化に向けた鍵となる。

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 ■ブリヂストンスポーツ

【本社】東京都港区浜松町2-4-1世界貿易センタービル

【設立】1972年10月

【資本金】30億円

【従業員数】369人(2016年12月末現在

【事業内容】ゴルフボール、ゴルフクラブ、テニスラケット、テニスボールなどの製造・仕入れ・販売