【高論卓説】企業に必要な能力増強投資 将来の利益獲得、経営者の決断力次第 (1/2ページ)

「響17年」、サントリーは原酒の貯蔵能力を増強する投資に踏み切った
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 人手不足で企業の省力化投資が進んでいるが、能力増強投資に消極的な経営者も多く、そのことが部品供給の不足を招き、省力化投資の進展も阻むという「落とし穴」にはまり込むリスクがありそうだ。受注残が増えるだけで出荷が進まないことに「安住」する企業が増えれば、日本の潜在成長率は、0%後半で停滞したままになるだろう。

 最近、よくある話として耳にするのは、人手不足の状況から脱するため、自動化投資を進めようと機械メーカーに連絡すると、すぐには納品できないといわれ、自動化が進まないケース。機械メーカーに納入している部品メーカーの生産が間に合わず、完成品を出荷できないということが起きているらしい。

 リーマン・ショック前や、さらに遡(さかのぼ)って石油危機の前後なら、受注残が積み上がる状況が長期化しそうなら、生産能力を増強する設備投資が行われ、「欠品」が常態化するようなことはなかったという。

 だが、少子高齢化に警鐘を鳴らす記事が数多く流れ、日本国内の市場規模が「必ず縮小すると多くの経営者に刷り込まれた」とある大企業の幹部は話す。今は需要が多くても、設備増強が終わったころには、市場は縮小し、せっかくの新設備が無駄になるとの警戒感だ。

 マクロ経済の専門家などは、こうした状況は長続きせず、いずれ能力増強投資が動き出すだろうとの楽観論も出ている。しかし、現実に部品不足で設備投資の進展が遅れるようなら、さまざまな分野で「機会損失」が発生し、潜在成長率がジャンプアップするせっかくの機会を失いかねないというリスクにも注目すべきではないか。

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