【講師のホンネ】鎧を与えずして戦わせるな! 藤田由美子


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 ここ6年、新年度には毎年、新入社員研修を任されるようになった。新社会人には、「知っている」=「できる」という、成果を伴う思考と行動が求められる。また、この時期には理想と現実のギャップに愕然(がくぜん)とすることも少なくない。なぜなら、新人研修で習う基礎的な応対(型)と、現場での実践に大きな違いがあるからだ。私が行う新人研修では、「基本の型(鎧(よろい))」と一緒に、「人としての心(マインド)」を添えることに重きを置く。マインドがそろうと、些細(ささい)な失敗はプラスに転じる原動力にもなる。

 先日、ある新人女性からこんな相談を受けた。「先輩の電話応対って結構楽そうです。4月に研修で習ったとおりに電話をとると、そんな丁寧な応対をしなくていい。この辺りは農家とか、長靴をはいてくる人がお客さんなんだよ。そんな言葉を使ったら、お客さんが落ち着かないよ」と注意をされたそうだ。4月には目をキラキラさせていた彼女は困惑を見せる。私は先輩の気持ちもわからないではない。

 一方、新人のときにしか基本を身に付ける機会はない。一生に一度の機会を奪わないでほしいと切に願う。新人のうちから先輩のように「あーハイハイ、ごめんなさい、それできないんですぅ」などと、フランクな言葉遣いではお客さまが不快なのはもちろん、本人の成長も望めない。お客さまの問いに対し、満足な回答をするだけの知識や経験が不足している彼らが先輩と同じような応対をしたのでは明らかに相手を怒らせる。

 何を聞かれてもお待たせしない、日常会話にも気軽に応じられるならそのフランクな応対も許されるかもしれない。聞かれる度に「少々お待ちください」を繰り返さねばならない新人にとって唯一身を守る「鎧」は、ビジネスマナーである。電話で相手の名前が聞き取れず、「えっえっ? もう一回…」では相手も怒って当然である。そして先輩に電話を替わった揚げ句、「今年の新人は使えない」と怒られる。新人の成長を奪っている張本人は、先輩自身だという自覚はみじんもない。人手不足の今、まだまだ知識・経験不足の新人が応対をするのは否めない。だからこそ、最初に基本をしっかり身に付けさせてほしい。その良き見本が先輩であればおのずと新人は育つ。

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【プロフィル】藤田由美子

 ふじた・ゆみこ 1969年、東京都生まれ。短大卒業後、バブル崩壊の年に証券会社に入社。投資相談の営業としてマイナスからの信頼回復に奔走。その後婚礼業界でMC、コンサルタントとして約2000組に関わる。現在は実践で培ったクレーム対応、顧客満足度(CS)向上を得意とし、北陸を拠点にリピート率90%超の研修を行う。