東芝メモリ、遠いサムスンの背中…迅速な投資が勝ち残りのカギ

 米投資会社ベインキャピタルを軸とする「日米韓連合」へ売却された東芝メモリが4日、都内で事業戦略説明会を開き、成毛康雄社長が「技術の優位を核にしてグローバル競争を戦う」と研究開発を加速させる方針を示した。同社が手がけるNAND型フラッシュメモリーは競争が激しく、世界シェア1位の韓国サムスン電子の背中は遠い。迅速な開発・生産投資を続けられるかどうかが勝ち残りのカギを握る。(山沢義徳)

 「われわれの主導により、これまでとは異なる素早い意思決定を実現する」

 共同で記者会見に臨んだベインの杉本勇次日本代表は、東芝本体から独立したメリットを強調した。取締役5人のうち、成毛社長と大株主、HOYAの鈴木洋最高経営責任者を除く3人がベインから就任した。今後は、M&A(企業の合併・買収)も視野に入れて企業価値向上を図る。3年後の株式上場が目標だ。

 幅広い分野で記憶媒体に用いられるNAND型フラッシュメモリーの市場は成長が続く。英調査会社IHSマークイットによると、2017年は金額ベースで前年比40%以上伸長した。

 成毛社長は「データセンター向けの需要が大きく、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)も牽引(けんいん)役だ」と、今後の市場拡大を楽観する。

 膨らむ需要に対応するため四日市工場(三重県四日市市)を増強したほか、岩手県北上市の新工場で2年後の量産開始を目指す。

 また研究開発の強化に向け、今後2年間で技術者を500人増員。記憶素子を縦に積み重ねて容量を増やす「積層化」で、最先端の64層品から次の96層品の開発を急ぐ。NAND型と異なる次世代メモリーをめぐり、他社との技術提携やM&Aも検討するという。

 ただ東芝メモリ買収の枠組みは、需要家の米アップルや競合相手の韓国SKハイニックス、大株主の東芝に対する「指図権」を持つ産業革新機構や日本政策投資銀行などが入り乱れ、複雑になった。激しい市況変動に応じた機動的な投資が阻害されれば、競争力の低下につながりかねない。