神戸製鋼データ改竄 遠のく信頼回復 海外の訴訟に影響も

神戸製鋼所東京本社を出る、押収した資料を積んでいると思われる車両=5日午後、東京都品川区(萩原悠久人撮影)
神戸製鋼所東京本社を出る、押収した資料を積んでいると思われる車両=5日午後、東京都品川区(萩原悠久人撮影)【拡大】

 アルミニウム・銅などのデータ改竄(かいざん)問題で東京地検と警視庁から家宅捜索を受けた神戸製鋼所が刑事責任を問われれば、名門のブランドがさらに失墜するのは必至だ。神戸製鋼は4月から新経営陣の下で再発防止に取り組み始めたばかりだが、信頼回復は出だしからつまずく。また日本の捜査が北米で抱える訴訟などに影響を及ぼす可能性も捨てきれない。

 神戸製鋼は不正を受けて川崎博也会長兼社長(現取締役)らが引責辞任し、山口貢副社長が4月1日付で社長に就任した。山口氏は就任前の会見で、「再発防止策の実行による信頼回復をやり切る」と強調。不正の原因となった閉鎖的な風土の改善などにメスを入れつつある。

 600社以上にのぼるデータを改竄した問題製品の出荷先では、1社を除き安全検証が済んだ。目立った顧客離れもなく、平成30年3月期は鉄鋼市況回復などで連結最終損益は3年ぶりに黒字転換。データ改竄関連で生じた120億円の利益の目減りを補った。

 しかし依然、リスクは残る。31年3月期は450億円の最終黒字を見込むが、300億円は不動産子会社の売却益だ。しかもデータ改竄関連では引き続き、弁護士費用を中心に100億円の利益の下押し効果が残っている。現状では想定していない顧客離れによる販売減が起きれば、実質的な赤字に逆戻りしかねない。

 また米国やカナダでは損害賠償を求める集団訴訟を起こされており、日本での捜査次第で不利に傾きかねない。問題製品の出荷先に米航空機大手ボーイングなどが含まれる中、米司法省は本格捜査を開始。刑事罰に問われ、巨額の罰金を科される恐れもある。米国による鉄鋼とアルミの輸入制限を含め、先行きの不透明感は強まる一方だ。(井田通人)