【Bizクリニック】倉庫の数だけチャンスが生まれる


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 □イーソーコグループ会長・大谷巌一

 物流は運送(輸配送)だけでは成り立たない。荷主である顧客の大切な荷物を預かる(保管)重要な基盤となるのが「倉庫」だ。倉庫は物流産業を縁の下で支える黒子の立ち位置だったが、運送と同様、倉庫にも危機が押し寄せ、勝ち組・負け組の線引きが鮮明になってきた。そこで、筆者は「物流不動産ビジネス」を提案している。自社倉庫を中心とした倉庫営業スタイルから脱皮し、他社倉庫のリーシングやリノベーションまで行う。物流営業を軸に、物流業に関連した不動産、建築、IT、金融など異業種間に横串を通すことで、「倉庫の数だけチャンスが生まれる」メリットを享受できる。

 佐川急便が撤退したアマゾンの荷物を廉価で請け負ったヤマト運輸は、時間指定や再配達などマイナス要素が重なり、総数を規制してセールスドライバーに対する未払い残業代を解消した。このヤマトショックは氷山の一角に過ぎない。物流業界の構造的なうねりが地殻変動を引き起こしている。

 日本で貨物輸送の9割以上の物量を担うのはトラック輸送だ。経済成長を糧に発展をしてきた。しかし、最も重要な担い手である中長距離のドライバーが足りない。アマゾン、楽天をはじめとするネット通販市場が拡大するほど、エンドユーザーに運ぶ「ラスト・ワン・マイル」を担うドライバーは逼迫(ひっぱく)する。若い人たちがドライバー職に就こうとしなくなった。

 負荷がかかると、ダムと同様に“弱い”部分から崩壊する。労働時間は長く、給与体系は低い運送業界の課題は山積しており、過酷な労働環境下でどんどん疲弊する。無駄な価格競争で足の引っ張りあいが生じ、対価として物流企業に支払われる料金水準が低くなり、コスト倒れの構造を招いた。

 意外かもしれないが、原材料の国内輸送量は2000年以降、減少傾向にある。2000年と15年の貨物総量を比べると約25%低下した一方、ネット通販商品や完成品のニーズは増えている。その結果、少量多品種の傾向が加速され、運ぶ回数が増えていく。

 ヤマト運輸が宅配便を値上げしたのをきっかけに、物流各社は荷主と運賃是正を交渉し、今年の決算でも運賃上昇が焦点となった。しかし、運賃値上げは新規参入者の増加や自社物流への切り替え、あらゆるものがネットにつながるIoT(モノのインターネット)を活用した合理化を加速させ、結果的に物流の地殻変動が収まることはないと筆者は分析している。

 物流形態の変化とともに新型の倉庫が大量に供給され、従来型の倉庫の空きが目立つようになった。この空いた倉庫を物流用途に限定することなく、多目的に活用し、最終的に物流営業を積極化して業態化するのが「物流不動産ビジネス」だ。

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【プロフィル】大谷巌一

 おおたに・いわかず 高千穂商大(現・高千穂大)卒。1981年東京倉庫運輸入社。92年東運開発に出向し、物流不動産ビジネスを創始。99年アバンセロジスティック(現イーソーコ)を設立し、副社長。2014年から現職。日本物流不動産評価機構副会長、日通学園流通経済大客員講師を務める。61歳。東京都出身。