シャープ、2000億円上限の公募増資 再建進み、財務正常化図る

シャープ本社=堺市
シャープ本社=堺市【拡大】

 シャープは5日、2000億円を上限とする公募増資を行うと発表した。7月にも実施する見通し。調達した資金は金融機関が保有する優先株の買い取りに充てる。2018年3月期の最終損益が4年ぶりに黒字化するなど台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下で再建が進んだことを受け、経営危機時の「負の遺産」処理にめどをつけ財務の正常化を図り、攻めの経営に転じる。

 公募増資は企業が新たに株式を発行して広く株主を募集し、市場から資金を調達する手法。金融機関などからの借入金と違って返済する必要のない資金が得られる半面、発行済み株式数が増えて1株当たりの価値が薄まり、短期的に株価が下がることもある。ただシャープは今年4月に6年ぶりの復配を決めるなどしており、投資家の需要も見込めると判断。増資に踏み切ることにした。鴻海グループは現在シャープ株の約65%を保有しており、増資により保有割合はやや低下するが、引き続きシャープは鴻海の傘下にとどまる。

 調達した資金で買い取る優先株は、シャープが液晶パネル事業の不振で巨額赤字に陥っていた15年6月に発行。みずほ銀行と三菱UFJ銀行がそれぞれ1000億円ずつ保有しているが、交渉によりシャープが両行から計約1850億円で取得することで合意した。

                  ◇

 5日の東京株式市場で、2000億円を上限とする公募増資の実施を決めたシャープの株価が下落した。終値は前日比120円(4.06%)安の2833円だった。

 午後の取引時間中に増資に関する報道が伝わると、市場では既に流通している株式の価値が低下する希薄化への懸念が広がった。「増資の規模が大きいことが嫌気された」(国内証券)といい、年初来安値となる2657円まで急落する場面があった。

                  ◇

【用語解説】シャープの経営再建

 主力の液晶パネル事業の不振で業績が大幅に悪化したシャープは、一時債務超過に陥った。2016年8月に台湾・鴻海精密工業の傘下に入ってコスト削減など業務改善を進め、17年12月に東証2部から1部に復帰した。18年3月期連結決算は、液晶テレビの販売が好調だったことなどが寄与し、最終損益が4年ぶりの黒字となった。