アサヒグループHD傘下のニッカウヰスキーでも26年に「竹鶴12年」、27年に「余市」と「宮城峡」の熟成年数を表記した商品の販売を終了した。これも原酒不足が原因。他の人気商品も出荷を限定するなど、綱渡りの状況だ。
原酒不足の理由は、ウイスキー市場の縮小・拡大の乱高下だ。昭和58年に年間38万キロリットルとピークだった市場はその後、減少の一途をたどり、平成20年には5分の1程度の7万1000キロリットルに落ち込んだ。
焼酎に押されたことが大きな要因だ。スタイリッシュなボトルなど、イメージ刷新が、若者にも受け入れられるようになったほか、本格焼酎も押し上げた。さらに、価格がウイスキーよりも安いことから、バブル経済崩壊による景気低迷の中で、消費者が焼酎にシフトし、完全にウイスキーが押された。
これが一転するきっかけを作ったのが、ウイスキーを炭酸水で割った「ハイボール」ブームだ。若者には新しいお酒、中高年には懐かしいお酒として、注目され、徐々に市場を取り返した。加えて、NHK連続テレビ小説「マッサン」の効果がさらに市場を広げることになり、29年には16万キロリットルと、底だった20年の約2.2倍まで回復した。
しかし、サントリーもニッカも10年ごろには、当時の市場規模10万キロリットル以下が続くことを想定し、そのレベルの生産体制を数年前までとっていた。3~4年前に増産を始めたが、今必要な熟成10年以上原酒は足りない。これが原酒不足の最大の背景だ。