三菱マテリアル社長が品質不正で引責辞任 代表権のない会長に 信頼回復に疑問符

 三菱マテリアルは11日、製品データ改竄(かいざん)などの品質不正を受けて竹内章社長(63)が引責辞任し、代表権のない会長に就く人事を発表した。後任には小野直樹副社長(61)が昇格する。22日の定時株主総会後の取締役会で正式決定する。8日に本体でも新たな不正が発覚する中で責任を取った形だが、竹内氏が会長にとどまることには批判の声も出そうだ。(井田通人)

 三菱マテのデータ改竄は、昨年11月に子会社の三菱電線工業(東京)などで初めて発覚。今月8日には、本体の直島製錬所(香川県直島町)で日本工業規格(JIS)に適合しないコンクリート原料を誤ってJIS製品として出荷していたと公表した。認証機関は同製品の認証を取り消した。

 竹内氏は、子会社による不正の最終調査報告書を公表した3月28日の記者会見で、「(再発防止の)陣頭指揮を執る」と続投を表明していたが、不正が本体に及んだことで、このままでは株主総会を乗り切れないと判断したもようだ。

 竹内氏は11日、「品質問題の経営責任をより明らかにするため、経営体制を変更する」とのコメントを発表。池沢広治直島製錬所長(55)の更迭も打ち出した。

 しかし同社の品質不正をめぐっては、問題製品の出荷先が延べ800社以上にのぼる上、不正発覚から公表までに時間がかかり、公表後も次々と新事実が発覚。社長辞任のタイミングとしては遅きに失した感が否めない。

 直島製錬所の不正を4月に把握していたのに明らかにせず、今回の社長交代についても記者会見を開かないなど、説明責任の果たし方にも疑問符がつく。

 竹内氏は代表権を返上するが、引き続き取締役会長として経営に参画し、グループのガバナンス(企業統治)強化にかかわる指導・監督を担うとしている。副社長として竹内氏を補佐し、不正の調査にあたってきた小野氏にも責任の一端はある。経営陣の不祥事対応のまずさが目立つ中、信頼を回復するのは容易ではない。

 小野直樹氏(おの・なおき)京大卒。昭和54年三菱鉱業セメント(現三菱マテリアル)。常務などを経て平成28年6月から取締役副社長執行役員。愛知県出身。