【埼玉発 輝く】ベンチャーウイスキー 廃棄予定の原酒抱え起業 味と技術に評価 (1/4ページ)

 「イチローズモルト」と言えば、ウイスキー通でその名を知らない人はいないだろう。世界で最も権威のある品評会「ワールドウイスキーアワード(WWA)」で2年連続して世界最高賞を受賞。昨年は1つの熟成たる(カスク)から瓶詰めしたシングルカスク・シングルモルト部門で、今年は製造本数が限られたブレンデッドウイスキー・リミテッドリリース部門で栄えある賞に輝いた。

 「昨年は熟成した原酒、今年はブレンドの技術でいただいた。2つそろって一人前でしょうか」。ベンチャーウイスキーの肥土伊知郎社長は謙虚な笑顔を見せる。

ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所=埼玉県秩父市(池田証志撮影)

ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所=埼玉県秩父市(池田証志撮影)

 600本売るのに2年

 肥土社長は、江戸時代から続く酒造会社の長男として生まれた。東京農業大学醸造学科を卒業後、飲料大手のサントリー(現・サントリー酒類)に入社。酒屋やバーなどを回る営業をしていたが、実家の経営が傾き、29歳で呼び戻される。その後、民事再生手続きを取り、会社は人手に渡ることになった。

 同社は1941年、現在の埼玉県羽生市に進出した後、ウイスキーの本格的な生産を開始。肥土社長は「飲んでみると、個性的で面白い」と、営業時代に懇意になった有名バーに持ち込んだところ、評判が良かった。当時、ウイスキーは水割りで飲むのが主流で、シングルモルトウイスキー自体もあまり知られていなかった。ウイスキーは「時間がかかる。保管する場所が必要。売れていない」と三重苦の時代だった。

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