【高論卓説】地銀、再編の波風 業務改善命令が映す「低収益」の現状 (1/2ページ)

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 1990年代後半から2000年代初頭にかけて、大手銀行に吹き荒れた金融再編の序章を思い起こさせる光景だ。ただ、20年を経て、再編の舞台は大手銀行から地方銀行に移った。

 金融庁は2日、18年3月期決算で7年ぶりに最終損益が赤字に転落した福島銀行に業務改善命令を出した。続いて「コア業務純益」が2年連続で赤字となった島根銀行に対しても業務改善命令発出を検討していると報じられた。いずれも「低収益」が行政命令の主因であり、法令に違反したわけではなく、低収益=業務改善命令となることに違和感を持つ地銀関係者も少なくない。「業務改善計画を策定するといっても、まさかマイナス金利政策を止めてくれとは書けないだろう」と冗談半分、本気半分で憤る地銀幹部もいるほどだ。低収益で業務改善命令を受けるのであれば、「いずれわが身も」となりかねないと身構えている。

 ただし、この改善命令の背景を子細に眺めれば、うなずける部分もある。福島銀の赤字転落は、マイナス金利政策に起因する資金利ざやの縮小に加え、含み損を抱えた投資信託の解約・売却に伴う損失処理が大きく、米国金利の上昇に足をすくわれた格好となっている。

 この投資信託の含み損の早期解消は、金融庁の指導によるものであろう。赤字の責任を取って、森川英治社長や幹部が辞任した。その後任社長には、地元のライバルである東邦銀行の元専務で、「とうほう証券」社長であった加藤容啓氏が就く。

 この人事について、関東の大手地銀幹部は、「福島銀を東邦銀に救済合併させようという金融庁の意図を感じる」と語る。業務改善命令は、その布石として、福島銀の人件費などの経費削減のテコになり得るというわけだ。

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