【Bizクリニック】営業用・自家用トラックの統合管理へ


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 □イーソーコグループ会長・大谷巌一

 物流業界が大きく変わる。背景には100年に一度の変革期といわれ、注目を集めるMaaS(Mobility as a Service)がある。米ウーバー(Uber)に代表されるライドシェアリングやカーシェアリングで「自動車を所有せず、乗りたいときに利用する」サービスだ。

 2015年度の営業用トラック(緑ナンバー)は140万台、自家用の白ナンバーは616万台(自動車検査登録情報協会調べ)。MaaSによる規制緩和で国が緑ナンバーと白ナンバーを統合管理し、物流業に生かせればドライバー不足は一気に解決する。筆者はその大転換が早ければ3年後、遅くとも5年後と予測している。

 物流業が抱える長時間労働、輸送コスト上昇、過疎地での買い物難民などを解決する糸口にもなる。配達を、一般ドライバーなどに委託することで、エンドユーザーに運ぶ「ラスト・ワン・マイル」もスムーズになるだろう。

 「所有」から「利用」への価値転換は若者たちに確実に浸透している。60代はかつてマイカーを持つことに憧れたが現代の若者はカーシェアを利用し、浮いたお金をデート費用に捻出するクールかつスマートなライフスタイルが定番になりつつある。個人間カーシェアサービス「Anyca(エニカ)」でポルシェなどの高級外車を安く借り、カーライフを満喫する人もいる。

 プリウス、ノート、フィットなどカーシェアリングで人気車種のユーザーは、自分が使わないときにマイカーをシェアに出し、受益分を維持費に補填(ほてん)する。今や自動車は、見えや趣向性ではなく、「経済合理性」を最優先するツールとなっている。

 半面、自動車メーカーは、MaaSの普及で生産台数が減り、ビジネスモデル崩壊の恐れがあるため、対抗策に打って出た。トヨタ自動車は18年1月に米国で開かれた展示会で、MaaS専用次世代電気自動車「e-Palette Concept(イーパレット・コンセプト)」を参考出展し、話題を呼んだ。20年にイーパレットの一部機能を搭載した車両で東京五輪のモビリティーとしての活用を目指し、20年代前半に米国を中心とした地域でサービス実証を始める予定だ。

 この構図は、物流施設にも当てはまる。団塊世代の経営陣は所有にこだわったが、若い経営陣は利用へとかじを切り始めた。消費生活の多様化に伴って荷主オーダーが様変わりし、物流施設を賃貸したほうがリスクを回避できるからだ。これが物流不動産ビジネスを活発化させている。物流業には大きなチャンスが訪れる。しかし変化に対応できない会社は、転業または廃業を余儀なくされる。変革の波に踏み出すチャンスを逸しないためにも、MaaSは欠かせないキーワードとなる。

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【プロフィル】大谷巌一

 おおたに・いわかず 高千穂商大(現・高千穂大)卒。1981年東京倉庫運輸入社。92年東運開発に出向し、物流不動産ビジネスを創始。99年アバンセロジスティック(現イーソーコ)を設立し、副社長。14年から現職。日本物流不動産評価機構副会長、日通学園流通経済大客員講師を務める。61歳。東京都出身。