【高論卓説】「良品廉価」と「三方よし」 日本企業に根付く共存共栄の精神 (1/2ページ)

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 最近、企業の社会的責任(CSR)が盛んに議論されるようになってきているが、読者の皆さんは「良品廉価」という言葉を聞いたことがあるだろうか。聞いたことのある人、あるいは意味が分かる人は、恐らく製造業に勤務経験のある人であろう。(JPリサーチ&コンサルティング顧問・杉山仁)

 「良品廉価」とは、製造業ができるだけ良いものをできるだけ安い価格で社会に提供することにより、社会の繁栄に貢献するという、日本のモノづくりに携わる人々の基本姿勢を表す言葉である。日本に昔から伝えられている、いわばCSRの考え方である。

 筆者は仕事上、日本のいくつかの製造業の経営に関わったことがあるが、伝統あるメーカーほど、「良品廉価」の考え方が経営陣から現場の社員まで徹底していた。ある老舗部品メーカーでは、朝礼と取締役会、経営会議の冒頭、社訓を全員が唱和し、その中に「良品廉価」という言葉があった。

 日本の製造業には「良品廉価」を徹底的に追求することにより、社会に貢献し、その結果として、利益が生じるという考え方が根付いていると思われる。例えば日本を代表するメーカーであるトヨタ自動車は、創業以来、「良品廉価」を社是の一つとしており、現在でもその考えを徹底している。

 筆者は欧米企業の経営も現場で垣間見た経験があるが、外国企業には「良品」の考えはあるが、「廉価」の考えは薄いように思われた。日本以外の企業では、「廉価」という発想は利益と反対の概念であり、製品はできるだけ高く売るのがよいという考え方が優先されているようであった。「良品高価」の発想である。

 例えば欧米の自動車やファッション関連のブランド企業は、「良品超高価」の考え方を徹底して追求し、良品ではあるが、庶民に手の届かない数倍から数十倍の価格で販売し、製造者の利益を増加させるというアプローチである。廉価で販売することにより一般の消費者に貢献するという姿勢ではなく、階級格差の激しい社会のビジネスモデルといえる。

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