【Bizクリニック】物流不動産ビジネスは「二刀流」


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 □イーソーコグループ会長・大谷巌一

 物流不動産ビジネスは、物流と不動産、双方のスキルと立場を利用する「二刀流」だ。そのメリットを生かして、商談で相手の懐に飛び込む際、相手の苦手分野を見定め、自分の得意エリアへ引き込む戦略をとる。自分のペースで商談を進めることができる。大谷翔平選手がインタビューで、投手と打者の二刀流のメリットについて「投手から見た打者、打者から見た投手の心理をパラレルに読み取ることができる」と答えていた。これと同じだ。

 武術の専門家からすれば亜流かもしれないが、刀は1本より2本あった方が有利だと考える。筆者も物流業と不動産業の現場経験を積み重ね、多くの失敗を経験したことで、長所や課題、改善点など新たな気づきや発見があった。石を積み重ねていくうちにピラミッドができあがるように、物流不動産ビジネスを確立することができた。

 試行錯誤しながら培ったノウハウを凝縮したものだから、物流不動産ビジネスは一朝一夕にまねされることはない。それが強みとなっている。

 二刀流の特権は、物流不動産ビジネスセミナーにも生かされている。筆者は年に9回ほど、セミナーの講師を務めている。受講者リストを事前に主催者からもらい、不動産業者向けセミナーには「物流論」、物流業者向けには「不動産論」に即した構成で話す。

 約10年前、こんなことがあった。物流業者対象のセミナーで、サプライチェーン全体最適化の話をした。物流業務を専門業者にアウトソーシングする3PL(サードパーティー・ロジスティクス)について解説したところ、3PLの定義について質問があった。物流専門家でも解釈をめぐって、さまざまな意見がある分野であり、それを皮切りに受講者間で3PLの在り方論争が巻き起こってしまった。

 また、別の日の不動産業者対象のセミナーでは、仲介契約で最大報酬を得る「囲い込み」について、善悪論争が始まってしまった。両セミナーとも本論に入る直前に受講者間で議論が紛糾したため、肝心なテーマを話す時間が不十分になってしまった。

 その道のプロに、専門分野を説こうとしたことが失敗の原因だった。上辺だけの理論、机上の空論は一切通じない。イチローにプロ野球のOBがアドバイスするようなもので、大人のイチローなら聞き流すかもしれない。しかし筆者が受講者の立場で「物流不動産ビジネス」について浅い知識を語られたら、徹底的に糾弾しているだろう。

 それ以降、筆者は受講者の専門領域にあえて踏み込まないようにした。物流業者には不動産論、不動産業者には物流論をテーマに講義することを心掛けている。この経験はビジネス上、営業トーク、とくにクロージングにおいて非常に役に立っている。

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【プロフィル】大谷巌一

 おおたに・いわかず 高千穂商大(現・高千穂大)商卒。1981年東京倉庫運輸入社。92年東運開発に出向し、物流不動産ビジネスを創始。99年アバンセロジスティック(現イーソーコ)を設立し、副社長。14年から現職。日本物流不動産評価機構副会長、日通学園流通経済大客員講師を務める。61歳。東京都出身。