【ホープクーリエの旗手 藍澤證券の100年】(5-1)

東京証券取引所(ブルームバーグ)
東京証券取引所(ブルームバーグ)【拡大】

  • 藍澤證券の本社ビル=東京都中央区
  • 藍澤證券の店頭。資産形成などの希望を届ける

 ■人と地域に希望を届ける

 7日に創業100周年を迎える藍澤證券。1918(大正7)年7月から始まるその歴史は、関東大震災、世界大恐慌、第二次世界大戦など繰り返す歴史の大波を乗り越えてきた。日本の証券市場は厳しい規制に縛られながら戦後の高度経済成長、バブル景気を経て肥大化したものの、バブル崩壊後の20年に及ぶ景気低迷や市場ルールの刷新ともいえる金融ビッグバンなどに大きく揺さぶられた。厳しい淘汰(とうた)をくぐり抜け、業界に確かな足跡を残し続ける藍澤證券は、日本証券市場の『生き証人』といえる。今、同社は超リテール戦略を打ち出し、「ホープクーリエ(希望の宅配人)」を次代のキーワードに据える。同社の歩みを振り返りながら、次の100年に向けた事業展開をひもといていく。

                  ◇

 ■「超リテール戦略」 業界に確かな足跡

 ◆「アジア」と「地方創生」

 「より多くの人に証券投資を通じ より豊かな生活を提供する」-藍澤證券が掲げる経営理念だ。同社は目指すべき指針を「100年の歴史で培った力でお客さまに希望を宅配する『超リテール証券』へ」という言葉にまとめた。希望の宅配人を「ホープクーリエ」という。「富と喜びと希望を与えること」を使命と考える藍澤證券の戦略は、同業他社とは一線を画すものだ。同社はバブル崩壊後の景気低迷の影響が色濃く残る2000年ごろから、アジアの証券市場と日本の投資家を結ぶ取り組みを進めてきた。現在までに同社が扱う海外市場は香港、上海、深セン、台湾、韓国、シンガポールなど12に及ぶ。新興国の経済成長の果実を顧客に届けると同時に、多国に対応することでカントリーリスクを最適に分散できるという。

 こうした海外市場の開拓と同程度の熱をもって取り組んでいるのが、日本の地方・地域の活性化だ。同社は、他社が国内拠点を整理縮小するなか、東京だけでなく中部、関西、中国地方まで支店網を拡大している。なかには下田支店のように伊豆半島で唯一の証券会社の拠点となっているところもある。金融教育の遅れもあり、日本では証券投資を強く警戒したり、身近に感じていない人も少なくない。ましてや外国株取引に参加するハードルは高い。こうしたさまざまな障壁や逆風を超えるためにも、同社は顧客の近くに支店を構え、どんな小さな相談にも乗る姿勢を強調している。

 同社は銀行や信用組合など地域金融機関、地方大学などとの連携を強めている。業界の違いや地域の垣根、国境さえも越えて、証券仲介だけでなく、地域企業の海外展開や事業拡大を支援しつつ、事業承継や相続問題への対策など、複合的な金融証券ビジネスを提供したいという。この取り組みを、同社では「クロスボーダー・ソリューション」というコンセプトで示し、商標登録も取得するなど、社内外に目指すべき方向性を明確化した。

 ◆人づくりに尽力

 クロスボーダー・ソリューションは事業の指針だけにとどまらない。同社は小学校から大学まで幅広く金融経済教育を展開しているが、このために地方大学と連携しデジタル紙芝居の教材を製作したり、投資体験を含む高度な内容の寄附講座を行っている。直接的な人材づくりにも積極的で、地方の大学生を集めて地元企業と東京の企業両方で就業体験させるクロスボーダー型インターンシップを主催。そうした活動は、金融機関などの地方創生に資する特徴的な取組事例として評価され、表彰対象ともなっている。

 1990年代の金融ビッグバンで株式の売買手数料が自由化された。手数料の値下げ合戦は、インターネットの普及で台頭したネット系証券に軍配が上がり、大手証券は投資銀行業務を志向しつつある。細かな店舗網を生かした複合サービスを展開する藍澤證券の事業戦略は、逆に新鮮に映り、次代の証券会社の新機軸の1つになるのかもしれない。1800兆円以上の家計金融資産を有する津々浦々の国民に、資産形成などの希望を誰が届けるのか。藍澤證券は「ホープクーリエ」の旗手として名乗りを上げている。