【中小企業へのエール】プラスチック 生産・使用規制と石炭火力発電

増山壽一旭川大学客員教授
増山壽一旭川大学客員教授【拡大】

 □旭川大学客員教授・増山壽一

 最近、欧州や東南アジア諸国連合(ASEAN)でプラスチックが海洋環境を破壊しているため、急速にその生産や一部の使い捨て製品の使用を規制すべきだとの論調が高まっている。

 シンガポールでは栄養失調で死んだクジラの胃の中が、海洋投棄されたプラスチック袋だらけだったとの映像が配信され、この論調に拍車をかけている。

 いろいろな場面でショッキングな映像が、世の中を変えていく大きな力となっていく。

 また、それを知ってか、ある者はその映像を作り出して、世の中を力ずくで、変えようとする。

 そんな中で日本は、いつも、優等生というか、ある意味、世界の動きに過敏に反応せず、現状を尊重しながらうまく問題を解決しようとする。その結果、論調の主催者からは、世界でもっとも遅れているといういわれなきレッテルを貼られて、糾弾されることが多々起きる。

 捕鯨をめぐる日本への糾弾でも、地球環境問題でもそうだった。世界で最も省エネが進み、電車やバスで通勤するこんな環境に優しい国に、実質的にもっとも厳しい二酸化炭素(CO2)排出規制がかかった。

 最近の石炭火力をめぐる動きも同じだ。欧州やインドなどの何十年も前の古い石炭火力発電設備を更新して、日本の最新鋭の石炭火力タービンに変えれば、環境にも優しく、エネルギー効率も良くなるにも関わらず、石炭火力全体が悪と見なされ、それに融資する銀行も悪という国際ルールがアッという間にできつつある。

 プラスチック規制もその兆しを感じる。欧州やASEANのビーチに行った人は、よくご存じだと思う。これまであまりにも多くのプラスチックが、無造作に使われ過ぎていた。

 まったくごみ箱がなく、町にポイっと捨てられていた。この問題の本質は、プラスチックにあるのではなく、その捨てられ方、ごみ箱の設置やごみの回収方法にある。日本人は、しっかり分別して、しかも最近はプラスチックごみを一般ごみと一緒に焼却してもダイオキシンを十分に除去できる技術が生まれて、問題の解決ができている。

 単にプラスチック製品の生産量や消費量が多いというだけで、日本の対応が不十分、そんな自虐的な報道を垂れ流すマスコミにもっと注意深くなってほしいと切に感じる。

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【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。17年4月から旭川大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。55歳。