ボーイング、三菱航空機の競合と提携 MRJ受注競争で不利な面も

米ワシントン州のグラントカウンティ国際空港上空を飛行する三菱航空機のMRJ=6月(共同)
米ワシントン州のグラントカウンティ国際空港上空を飛行する三菱航空機のMRJ=6月(共同)【拡大】

 航空機大手の米ボーイングと小型機大手エンブラエル(ブラジル)が戦略的提携に向けた覚書を締結した。国産初のジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」を開発する三菱航空機(愛知県豊山町)はエンブラエルと競合関係にある。「ボーイングがエンブラエルのバックにつくことで、MRJは受注競争で不利になる可能性がある」(航空アナリストの杉浦一機氏)との見方が出ている。

 ボーイングはMRJを導入する航空会社の保守点検を支援する契約を三菱航空機と結んでいる。三菱航空機の親会社、三菱重工業にとってもボーイングは旅客機の部品を納入している大口取引先で、重要なパートナーがライバルと手を組んだともいえる。

 ボーイング幹部は三菱側との関係について「変わる予定はない」と話しており、三菱航空機は「引き続き支援を受ける。状況を注視し、MRJの開発に専念する」としている。

 ただ産業アナリストの杉山勝彦氏は「三菱航空機はボーイングに頼らず自分たちで顧客支援の態勢を整えるべきだ」と指摘する。

 ボーイングと並ぶ航空機業界の雄、欧州エアバスはカナダのボンバルディアの小型機事業の一部を買収した。業界はボーイングとエアバスの二大陣営に集約されつつあり、三菱航空機を取り巻く環境は厳しさを増している。三菱航空機はMRJの納期を5度延期し、当初計画から7年遅れの2020年半ばの納入を目指している。