NHK常時同時配信 慎重な民放、ラジオは共通基盤も

 NHKの念願だったテレビ番組の常時同時配信に、総務省がゴーサインを出す。スマートフォンがあればどこでもテレビが見られるのは便利で、欧米などでは民放も含め既に実現している。だが日本の民放各局は同時配信に慎重で、NHKに先行される可能性が高い。

 NHKは、テレビのある世帯から集める受信料が財源だ。テレビを持たない1人暮らしの世帯が増え、NHKの番組を見ず、受信料も支払わないことに危機感を強め、常時同時配信を計画した。

 だが、スマホやパソコンしかない世帯から受信料を徴収することには、反発が強い。このため、当面は受信契約世帯向けのサービスとして実施する。

 とはいえ、NHKは12月から超高画質のBS放送2チャンネルも始める予定で、民放との規模の差は拡大。NHKと民放が競争しながら発展してきた放送業界のバランスが崩れる恐れもある。

 一方、民放各局は2015年に共同で「TVer」を設立、放送後1週間程度の番組の見逃し配信を始めた。CM付きで無料だ。さらに各局は「Hulu」「Paravi」などで放送済みの番組を有料配信している。

 しかし、民放幹部は「同時配信のニーズはまだ少なく、採算が合わない」と口をそろえる。

 ただ、配信コストが比較的安いラジオでは、民放とNHKが足並みをそろえ、同じ「radiko」で同時配信も放送済み番組の配信も行っている。政府の規制改革推進会議は先月、NHKや民放共通のテレビ番組の配信プラットフォーム(基盤)を設けるよう提案、各局も検討を始めた。