【ハザードマップ】太洋産業/連専 サンマの記録的な不漁で業績悪化

 ▼太洋産業 太洋産業は7月9日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。

 「タイサン」ブランドで知られる塩干物や生鮮魚の加工販売業者。イクラやタラコなどを主体に、サンマや生鮭などの鮮冷魚、サケフレークなどの水産加工品も扱い、1982年12月期には売上高330億1589万円を上げていた。釧路工場や根室工場、大船渡工場の生産体制を強化していたが、東日本大震災で大船渡工場が被災し全壊。このため、2012年3月期は売上高73億7252万円にまで落ち込み、その後も売上高は一進一退の推移を余儀なくされた。

 近年はサンマの漁獲量が減少したことで利益が減少し、経常利益ベースでは17年3月期まで8期連続の赤字と苦戦が続き、復興補助金などの活用で資金繰りを維持していた。子会社の売却など再編を進めていたが、主力製品のサンマの記録的な不漁が続き、原材料の仕入れが激減したため、自力再建を断念した。

 ▼連専 連専は6月29日、大阪地裁から破産開始の決定を受けた。

 同社は和歌山連合専門店(和歌山市)の組合員の割賦購入などを斡旋(あっせん)する目的で設立。県内唯一の総合信販会社で、信販業務に加えて消費者向け貸金業や結婚式場の運営などを行い、1993年3月期には売上高約18億6000万円を計上していた。

 しかし、バブル景気の崩壊などで加盟店や加入者が伸び悩むなか、貸金業法改正による過払い金返還請求が頻発し、2007年3月期には過払金返還引当金を特別損失計上したことで1億9661万円の赤字を計上した。その後も赤字が常態化し、08年3月期には冠婚事業をグループ企業へ譲渡。14年2月には消費者金融事業の新規融資を廃止し、その後、クレジットカードの取り扱いやギフトカードの販売も終了し、消費者金融業務の回収のみを行う状態となった。

 不動産売却により金融債務の圧縮などを続けていたが、過払い金返還請求問題を全て解決することが困難と判断し事業継続を断念、今回の措置となった。

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【会社概要】太洋産業

 ▽本社=東京都中央区

 ▽設立=1944年10月

 ▽資本金=1億円

 ▽負債額=約49億円

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【会社概要】連専

 ▽本社=和歌山市屋形町

 ▽設立=1960年9月

 ▽資本金=9048万円

 ▽負債額=88億9255万円

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 〈チェックポイント〉

 太洋産業は記録的な不漁を受けて業績が悪化。スポンサーを模索してきたが条件が整わなかった。スポンサー交渉に当たってはM&A(企業の合併・買収)などによる私的整理か、法的手続きを取った上での再生を目指すかは紙一重。財務や企業価値、事業環境が大きく左右し、資金繰りとの両にらみの中でぎりぎりの選択を迫られる。

 連専は過払い金返還請求に対応できなかった。貸金業法の改正、グレーゾーン金利の撤廃は消費者金融業の事業環境を一変させ、同社も近年は事実上の債務整理に入っていた。過払い金の返還訴訟を受け、身動きが取れない消費者金融業者は今でも多い。今後も一定の法的整理の発生は免れないだろう。(東京商工リサーチ常務情報本部長 友田信男)