米輸入車関税で大手、有効な対応策なく 再交渉の行方に警戒感 (2/2ページ)

米国での販売台数と輸出の占める割合
米国での販売台数と輸出の占める割合【拡大】

  • 決算を説明するスバルの岡田稔明CFO(右)ら=6日、東京都港区
  • 自動車大手7社の平成30年4~6月期連結決算

 また、有効な対策となり得るのは現地生産の拡大だが、「乗用車の生産を始めるには投資を決定してから長い期間がかかる」(日産自動車の田川丈二常務執行役員)。トヨタとマツダは米国に合弁工場建設を計画しているが、稼働開始予定は両社が合意した4年後の2021年。既存工場での増産も選択肢だが、調達する部品も増産してもらう必要がある。米国は好景気のため人手不足が深刻で、従業員を増やすのも容易でないという。

 「1000万台規模の国内生産があれば、日本の自動車産業は世界で戦っていける」。5月中旬、日本自動車工業会の会長に就任したトヨタの豊田章男社長はこう強調したが、トランプ氏が追加関税の検討を指示したのはその翌週のことだった。追加関税による値上げで米国の新車需要が減れば日本での生産減少につながり、地方の景気や雇用にも打撃を与えかねない。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリストは「米国での販売競争は激しく、価格を上げるにしても段階的な実施になるだろう。また、日米で並行生産されている車種は少なく、米国に生産を移管しようとすれば資金も時間もかかる」と、自動車会社の対応の難しさを指摘している。(高橋寛次)