文部科学省の官僚による東京医科大学の裏口入学事件は、今月に入り入学試験で女子受験者を一律減点していたことが報道されると、一段と大きく扱われることになった。本来公平であるべき入試で、今や先進国では珍しい性差別が堂々とまかり通っていたからである。(作家・板谷敏彦)
一方、大学関係者からは女性医師を増やしたくない意向が示された。肉体的負荷の重い診療科を避けたり、出産育児で離職したり、短時間勤務を希望したりするケースがあるからだ。同時に勤務医の苛酷な労働実態も明らかにされた。
しかし、医師に占める女性比率の国際比較をみると、先進国の中で飛び抜けて低いわが国の現状はわれわれが世界の中で異質であることを示している。これは医者に限らず裁判官、高級官僚、会社経営者らの分野でも同様である。世界経済フォーラムが発表している各国における男女の社会進出の格差を測る2017年度のジェンダー・ギャップ指数で、わが国は144カ国中111位と最低レベルである。
海外主要メディアではこうした観点から、不正入試の是非よりも、この事件はジェンダー(性別による格差)問題として大きく報道され、日本独自の雇用慣行が、家事や育児を期待される女性が仕事と両立できない状況を生んでいると指摘している。